ー3 ページ35
side 冨岡義勇
午後は数年振りに半休を取っていた。
自分の中の予定より30分遅れでどうにか仕事を終わらせ、新幹線に飛び乗る。
平日午後で幸いと自由席の一つを確保し、落ち着いたところでスマホを手に取った。
(今、のぞみに乗った。東京駅着は15時)
打ち込んだメッセージにはすぐ既読が付いたから、左手に端末を持ったまま、コーヒーに口を付ける。
(お疲れ様。丸の内南口の改札で待ってる)
彼女の方は、今日は1日有休を取ったらしい。
ネイルがどうの、などと話していた気もするが、とりあえずお互いの用事と仕事が片付き次第、東京駅で落ち合うことにしていた。
結婚式の会場を決めたのは、まだ残暑厳しい9月。
どんな人達を招待するか、人数は、など二人で話し合うのはどこか照れくさかったけれど、意外と嬉しそうな表情を見せてくれた彼女のことは、必ず。
………誰に言われずとも、大切にすると誓っている。
指定されたとおりの改札口を目指して歩き、多くの人々が行き交うそこへと視線を向ければ、すぐに見つけられるその姿。
穏やかに微笑んで小さく手を振る彼女に会うのは、それでも10日振りで。
つい緩んでしまう口元を片手で押さえ、歩みを速めた。
「待たせたか」
「ううん、さっき着いたところ。お疲れ様」
「どうする、このままホテルに行くか……」
明日の会場となるホテルは東京駅のすぐ傍にあり、前泊のための部屋も押さえてあった。
夜には互いの両親も合流して、それぞれ家族で過ごすことに決めている。
「うん、もうチェックインできる時間だしね。義勇
も疲れたでしょう。夜まで少し休んだら?」
「……ああ、確かに」
どちらかと言うと今日は精神的に疲れた、とついボヤいたオレに、Aは不思議そうな顔をする。
「大丈夫? 何かトラブったの?」
午前中、名古屋支店に不死川さんが来たことを彼女にいつ話すべきかと、一応は新幹線の中で考えていた。
正解はわからない。
それでも、結婚式が終わるまではせめて、あの人には少しでも感情を動かして欲しくないというのは。
(………独占欲、だろうか)
自分以外の他の男のことなど、彼女の頭や心から、全て追い出してやりたいだなんて。
そんな激しい感情が自身の内にもあったとは、彼女を好きになるまで知らなかった。
「いや………問題ない」
自嘲気味に笑ったオレを、彼女はまだ不思議そうな顔で見つめていたのだった。
・
225人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ひよ(プロフ) - あさひゆうひさん» しれっと続き書いててゴメンナサイww それでもコメまで残してくれるアナタが大好きです♡ ぎゆさんには幸せになって欲しい願望、わかってもらえて嬉しい!! (2021年12月27日 14時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
あさひゆうひ(プロフ) - 続きをありがとう!完全なハピエン!!こういうトーンのお話、ぎゆさんとっても似合う!そんで、ひよちゃん本当に書くのがうまい!言葉に出来ない程ぎゆさん幸せにしてくれてありがとう!!!(秒飛び出来なかったから拗ねて一日コメントしに行かなかったんじゃないよ!) (2021年12月26日 23時) (レス) @page50 id: 9c7376e839 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - りりちゃんコメントありがとうございます!! この前の塩辛さから一転、せっかくのバースデーなので甘いのにしました!! 笑 実弥くんと酒飲みたい私の願望……笑 (2021年11月30日 21時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - あいすさん» あいすさん、コメントありがとうございます!! そう言って頂けて本当に嬉しいです!! 少しずつオトナになっていく実弥くんも、中々良いですよね……あいすさんも更新頑張って下さい!!、 (2021年11月30日 20時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - あさひゆうひさん» コメントありがとうございます!! 告知スマンな、、でもすぐ読みにきてくれるキミが大好きです 笑 バースデー連載お疲れ様♥ 私も書けそうな時にボチボチ頑張りまーす!! (2021年11月30日 20時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ