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「Aも今から会えるのでしょう?」
実弥くんは、昼過ぎから自宅に戻った。
あちこちへ合格の報告をしたり、お祝いされたりしているだろう。
ーーー 夜、また来てもいいかァ?
今日はもうさすがに会えないだろうな、なんて考えていた私の顔が、そんなに淋しそうに見えたのか。
帰り際に尋ねてきた彼は、狙っているかのようにそういうトコロが上手だと思う。
年下のクセに。
「……あーね、うん」
「まあ、嬉しそうなお顔をして」
うふふふ、と口元に手をあてて笑うしのぶの背中を押しながら、玄関へと向かったその時。
軽やかに鳴るインターフォン。
「……あ、」
「噂をすれば、ですねえ。初めまして、不死川実弥
くん」
初対面の相手にフルネームで呼ばれ、さすがに実弥くんも驚いたようだ。
こんばんはァ、と頭は下げたけれど。
「ごめん、いきなり。小学校からの親友なの。胡蝶
しのぶ」
「驚かせてしまいましたか。すみません、Aか
らあなたのお話は色々と伺っておりましたので」
微笑むしのぶに、いや、などと珍しく口籠っている彼。
何それ、しのぶに見惚れてたりしないよね?
いや見惚れる気持ちはわかるけども。
パン、と控えめなクラクションの音が聞こえ、しのぶは実弥くんと入れ替わるようにドアの外へと出て行った。
「また連絡するね。来てくれてありがと」
「いえいえ。Aの幸せそうなお顔が見られて良
かったです……ああ、不死川くん」
私から彼へと視線を移し、おもむろに口を開く。
「……Aは口も悪いですし、少々ガサツで、単
純で、意地っ張りな上に見た目は○ッチですけれ
ども」
「え、何いきなり悪口言われてんの私」
あまりの理不尽さに真顔で言い返した私に、隣の実弥くんは思いきり吹き出した。
一度言葉を切ったしのぶは、花がほころぶような笑顔を見せる。
「私の大切な親友なのです」
「……はい」
即座に頷いた実弥くんの反応には、何だか満足気な表情をしてから。
「もし泣かせたり傷つけたりするようなことがあれ
ば、あなたには特製の毒を盛りますので」
ご承知おきを、と言い置いて、しのぶは軽やかに身を翻した。
二人揃って数秒その後ろ姿を眺めてから、顔を見合わせる。
「……毒、っつったかァ?」
「ああ、元薬学研究会で、薬剤師のタマゴなのあの
人」
ガチじゃねェか、と呟いた実弥くんには、声を上げて笑ってしまった。
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ひよ(プロフ) - あさひゆうひさん» しれっと続き書いててゴメンナサイww それでもコメまで残してくれるアナタが大好きです♡ ぎゆさんには幸せになって欲しい願望、わかってもらえて嬉しい!! (2021年12月27日 14時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
あさひゆうひ(プロフ) - 続きをありがとう!完全なハピエン!!こういうトーンのお話、ぎゆさんとっても似合う!そんで、ひよちゃん本当に書くのがうまい!言葉に出来ない程ぎゆさん幸せにしてくれてありがとう!!!(秒飛び出来なかったから拗ねて一日コメントしに行かなかったんじゃないよ!) (2021年12月26日 23時) (レス) @page50 id: 9c7376e839 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - りりちゃんコメントありがとうございます!! この前の塩辛さから一転、せっかくのバースデーなので甘いのにしました!! 笑 実弥くんと酒飲みたい私の願望……笑 (2021年11月30日 21時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - あいすさん» あいすさん、コメントありがとうございます!! そう言って頂けて本当に嬉しいです!! 少しずつオトナになっていく実弥くんも、中々良いですよね……あいすさんも更新頑張って下さい!!、 (2021年11月30日 20時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - あさひゆうひさん» コメントありがとうございます!! 告知スマンな、、でもすぐ読みにきてくれるキミが大好きです 笑 バースデー連載お疲れ様♥ 私も書けそうな時にボチボチ頑張りまーす!! (2021年11月30日 20時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
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