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side 不死川実弥
いつもなら、どうでもいいことを話して笑いながら歩くこの時間は、至福だというのに。
おしゃべりなAさんが黙りこくっているのもあって、付き合いだして初めてと言って良いくらいの重苦しい空気が、互いの間を流れていた。
とはいえ、自分にやましいことなど何も無いわけで、言い訳をするのも違う気がして。
結局はAさんと一緒に黙ったまま、足だけを前へと進めた。
「……ごめん、今日は一人で帰る」
「はァ?」
今夜は母親が家に居る日で、バイトを上がったらそのまま、Aさんのアパートへ一緒に帰る予定だった。
それはもちろん、彼女も前もって承知していたはずであって。
「……ンだよ、いきなり」
「何かちょっと今日………疲れちゃって」
はは、と形ばかりみせた笑顔はでも、すぐに消えてしまった。
要するに今夜は、オレとは一緒にいたくないと言われていると気づいた瞬間、つい口火を切ってしまったのは。
…………オレがまだ、ガキだからなんだろう。
「……何を気にしてンだか知ンねェけどよォ……アイ
ツとは、」
それはわかってる、と普段の快活な彼女からは想像もつかない程の冷たい響きで被せられ、ついカッとなってしまったのも。
「だったら何でンな機嫌ワリィんだァ? 年上のクセ
に大人げねェな」
言い過ぎだ、とは思った。
…………思ったけれど、止まらなかった。
「……何、いつもは年上振るなって怒るじゃん」
「それはアンタが、」
「実弥は何とも思ってないかもしれないけどさ。あ
のコ多分、実弥のこと好きなんだよ」
ふい、とオレから視線を逸らし、その唇から早口で出された結論にはだから、何と答えるのが正解だったんだろう。
いつもなら可愛いと思えるそんなヤキモチにすら、苛立ちは募った。
だから宥めることも出来ずにオレは。
「そう思いたきゃ勝手にしろや」
そんな言葉を投げつけてそうして、彼女を送ることすらせずに。
その場から足早に、去ったのだった。
…………そうして、今に至る。
スマホ画面の時刻は23時過ぎで、本当なら今頃は、彼女のあの柔らかな身体を抱きしめているはずで。
何度寝返りを打ったところで眠れるはずもなく、その度に、通知がきていないかどうかを確かめている。
(………あンの意地っぱり)
そのワードを脳内で呟いた直後。
合鍵をスウェットのポケットにねじ込んで、オレは家を飛び出した。
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ひよ(プロフ) - あさひゆうひさん» しれっと続き書いててゴメンナサイww それでもコメまで残してくれるアナタが大好きです♡ ぎゆさんには幸せになって欲しい願望、わかってもらえて嬉しい!! (2021年12月27日 14時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
あさひゆうひ(プロフ) - 続きをありがとう!完全なハピエン!!こういうトーンのお話、ぎゆさんとっても似合う!そんで、ひよちゃん本当に書くのがうまい!言葉に出来ない程ぎゆさん幸せにしてくれてありがとう!!!(秒飛び出来なかったから拗ねて一日コメントしに行かなかったんじゃないよ!) (2021年12月26日 23時) (レス) @page50 id: 9c7376e839 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - りりちゃんコメントありがとうございます!! この前の塩辛さから一転、せっかくのバースデーなので甘いのにしました!! 笑 実弥くんと酒飲みたい私の願望……笑 (2021年11月30日 21時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - あいすさん» あいすさん、コメントありがとうございます!! そう言って頂けて本当に嬉しいです!! 少しずつオトナになっていく実弥くんも、中々良いですよね……あいすさんも更新頑張って下さい!!、 (2021年11月30日 20時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - あさひゆうひさん» コメントありがとうございます!! 告知スマンな、、でもすぐ読みにきてくれるキミが大好きです 笑 バースデー連載お疲れ様♥ 私も書けそうな時にボチボチ頑張りまーす!! (2021年11月30日 20時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
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