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4枚目 ブルーデージー ページ6

「夏目くん、今日もカメラ構えてるんですか?楽しいんですか、それ」

「さぁネ。師匠はどう思ウ?」

「う〜ん……そうですねぇ」


 風が師匠の髪の毛を揺らした。

 なんとなくそれを追えば、遠巻きにこちらを見ている生徒と目が合う。

 目が合った生徒は途端に逃げ出していった。


「……」

「それ、今日は何枚か撮れてます?」

「まだだヨ。」


 ボクの目の前に突如出された台本の筒。

 反応するまでもなくそれはたちまち真っ赤な薔薇に変わった。


「たまには花なんてどうです?」


 そういえば、いつだったか桜を撮ろうとしてバルくんに捕まった日から花なんて撮っていない。

 真っ赤な薔薇は師匠の口元に微かにぶつかれば、今度は淡い青色の可愛らしい花になった。


「ブルーデージーですよ。」

「本当、何でも仕込んであるよネ……」


 ブルーデージーの花を優しく撫でる師匠に、ボクは何だか心を打たれた。

 『嗚呼、何て綺麗なんだろう』と思った。

 瞬間、ボクはカメラを構える。

 この一瞬を逃すな、そんな思いで。



──パシャ。


「あれ、今日の分、撮ったんですね」

「師匠といられることが何より一番の幸福だからネ」

「それはそれは、光栄です」

 
 流れるように彼の手元にあったブルーデージーはボクの髪に差し込まれる。


「あ、意外と似合いますね夏目くん」

「似合って悪かったネ……」

「ブルーデージーの花言葉は幸福という意味もあるんですよ。」


 独り言のようにも聞こえたその声。

 この花は押し花にでもして保管しよう。


 ボクはそう思いながら、先を歩き出した師匠と肩を並べた。

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作者名:竜花 | 作成日時:2019年8月15日 2時

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