思春期男子と超能力者２【梶蓮】 (ページ14)

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６０話ページ14

母親
「もう大丈夫だからね…」

俺は安心して母親に抱きついた

あぁ、良かった、助かったんだ…ってな

…でも、親父の一言が俺を現実に引き戻した

父親
「…壱馬、Aちゃん達は
一緒じゃないのかい…？」

壱馬
「…ぁ、えっと…」

母親
「まさか…逃げ遅れたの…？」

俺は母親の問いかけに上手く答えられなかった

絞り出した言葉は…

壱馬
「…僕、１人で…逃げちゃった…」

…これだけだった

父親
「…お前は悪くない、誰だって…
自分の命が１番大切さ…」

壱馬
「(…それは、違う…Aちゃんは…
自分の命より、僕らの安全を…)」

俺は心の中で父親の言葉を否定した

情けなくて涙が出てくる

すると避難所の外から声が聞こえてきた

”「津波が来たぞ…！！」”

俺たちは外に飛び出した

真っ先に目に飛び込んだのは、
大きな波に街が飲み込まれ行く光景だった

母親
「…大丈夫、命さえあれば…またやり直せるから…」

母親は震えた声で俺に言った

…確かにそうだ

命さえあれば、まだチャンスはある

…でももう、自分にそんな権利が
あるとは思えなかった

壱馬
「(…Aちゃんも、八重も…
僕が殺したんだ…)」

…そう考えるだけで胸が締め付けられた

壱馬
「(僕に…生きてる価値なんかｯ…)」

その場に泣き崩れそうになった時、
誰かが俺の名前を呼んだ

『…壱馬』

俺は驚きのあまり、肩が大きく揺れた

横からは母親と親父の驚きの声が聞こえる

恐る恐る顔を上げると
今１番”会いたくない人”がいた

壱馬
「A…ちゃん…？」