推しと運命だなんて聞いてない【太宰治】

3話 ページ4

そして高校生になった私はいつものようにイヤホンを付けながら、河川敷を歩いて自宅へ帰っていた。忘れちゃいけないのが私が文ストオタだったってことね。


モブでいいのでっていうか見るだけ、一目見るだけでいいので関わらせてください何でもしますから！！！！っていう思いで脳内はいっぱいよ！



探偵社の位置は分かるが乱歩さんにでも会ったりしたら大変なことになりそう(小並感)ということで聖地へは近づいたことがありません。チキンでいいですチキンで。



チキンな私は太宰さんが川に流されてこないかなーってことで河川敷を通学路にしている。もうほんと目に焼き付けられたらそれでいいんで。







だから目線はいつも川。川オブ川。川ラブ。


しかしまあ流されてこない。帰宅時間は夕方だし、太宰さんはいつも昼に流されるイメージあるじゃん？仕方ないか。




とは言いつつ、目線は川。だから前から来る人にぶつかることなんて日常茶飯事。迷惑な奴？？こっちの世界来てみ、ながらスマホ的な感覚で目線川だから。


今日も今日とてドン、とぶつかる。慌ててごめんなさいと言いながら頭を下げれば「前を向いて歩きたまえ。危ないだろう？」と返ってきた。



ぶつかった相手に注意されるのは度々あることだから、別にそこらへんは気にしていない。引っかかったのはその声だ。


なーーーーんか聞き覚えある声だと思った。甘くてなおかつイケボの代名詞のような声。ドクンドクンと心臓が波打つ。


ここここここれはまさか


太宰さんのお声なのでは…？






砂色のコートにクルクルと遊ばせた髪の毛、そして袖からピロピロなびく包帯。間違いない。加えてちょっと不貞腐れた無愛想なお顔。




太宰さんだあ…………。

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