【文スト×名探偵コナン】猟犬と迷いこみました

第拾幕 ページ12

【蟲に操れ逝く船旅】


帰り道を歩いていた時だ。かき氷も食べて満足していたと云うのに、思わぬ感覚に襲われたのが原因だ。それを感じた瞬間、悪寒がした。

Aの異能力にとって、間合いとは鍵になる。間合いでしか使えないそれは、敵意や害意等を敏感に感じ取ってくれるのだ。

『……条野さん、先に帰っていて下さい』



「……何故です?」



『私、本屋が見たくなってしまって』



「了解しました。先に帰ってますね」



なんて会話をして条野と別れたのだ。だが途端、害意のような視線が消えた。つまり、視線は条野に向けられていたか。はたまた。

ふと耳を澄ませる。声だ、高い声はまだ若い女性のもの。喋り方も(この云い方をするとA自身が年寄りのようだが)流行りのような。

そういうものを使っている気がする。恐らく女子高校生か、女子大生かもしれない。三人程で話しているらしく、此方から聞こえるに。

「めっちゃイケメンだわー」



「マジそれな!!あー、私もあーいう人と付き合いたいっ!!好きとか言われてみたい!!」



「クラスの男子とか無理だよねぇ。今の人、年上だしイケメンだし知的系だし!!」



「さっきの女の人と付き合ってんのかな」



「え、マジか。めっちゃ美人だったよね」



「妬ましいわー、美人でイケメンの彼氏持ちとか。人生勝ち組みたいな?」



「でも、あーいう女って性格悪そう」



「振り回してそうだよね。あのイケメンかっわいそ。ウチならそーいうことしないし」



「「それな!!」」



お付き合いしていないし、条野がまず好み(タイプ)じゃないし、性格は知らないが、それより悪いことしてる人間ですが＿＿＿＿＿＿何か。

それに条野も知的系なんかじゃなくて、もっとネチネチとした人を虐めるのが御好きな蜘蛛みたいな野郎だし、振り回してるの彼方。

思わず心の中で云い返しながら、敵意ならぬ嫉妬心や羨ましいという妬みの権化である女子たちを見る。嗚呼、皆可愛いのに勿体無い。

性格悪いのはどちらかと云うと、そちらなのではないだろうか。とは流石に本人達には云えないので、心の中に留めておくだけにする。

「……あ、Aさん」



『……ぇ』



「ボクだよ、ボク。江戸川コナン！！」



その時だった。所謂、少年探偵と出会したのは。幸か不幸かは理解できない。偶然と云うには不確かな程に、Aの感情を揺さぶる。

自身の骸骨(されこうべ)が軋む音がした。

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