【文スト×名探偵コナン】新双黒と迷いこみました (ページ8)

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第陸幕ページ8

【嗚呼、素晴らしき珈琲よ】

カランと鳴る鈴の音。薫る珈琲豆。大きな窓硝子。快適な湿度と温度。豊富な注文品。それなりに人気があるらしい喫茶店だ。

「いらっしゃいませ」

緊張したような面持ちの可愛らしい女性。全員が女性を見ると、お好きな席にどうぞ、とお盆を軽く押さえて店内に招き入れられた。

窓側が空いていたので、テーブル席に座る。向かいに敦、対する方の奥にA、手前に芥川の順で腰掛けた。注文表に手を伸ばす。

「何れも美味しそうですね!!」

『私、パスタにしようかな』

「僕は珈琲と羽村三度なるものを……」

「僕はハムサンドと烏龍茶で」

そう言えば、コナンの姿がない。羽織ものを脱ぎながら店内を見渡せば、カウンターで店員と話しているようだ。まぁ、良いが。

「すいませーん!!」

「あ、はい」

コナンと話している店員が伝票を持って駆け付けた。随分と顔が整っているが、周りにそういう人は幾千幾万といるのだ。

別に頬を赤らめたり、見とれたりはしない。目の前にいる二人だって、顔はかなり良い方だし、活け面とやらに分類されるだろう。

「珈琲二つと烏龍茶一つ、ハムサンド二つにカラスミパスタ一つ」

「かしこまりました。皆さんはどちらから来たんですか?あまり見掛けない顔なので」

金髪店員の容赦ない質問に、飲んでいたお冷やを吐き出しそうになった。この人は、この町全員の顔を覚えているというのか。

『ええと』

「よ、ヨコハマです」

「……へぇ、どうして米花町に?」

流石に異能の特異点が起こったせいで、この世界に飛ばされてきた……とかは言えない。そして特に、素敵な誤魔化しもない。

「仕事だ」

「仕事、ですか?皆さんは何の仕事を?」

「……先程から何だ。僕等のことは貴様には関係ないだろう。鬱陶しい」

そうだ、何なのだろうか。ただの客をそんなに探りたがるなんて、頭の螺が外れている。正直言って初対面だというのに気持ち悪い。

「いえ、ただ皆さん美男美女に黒服なんてあまりにも珍しくて……」

「不愉快だ、これ以上無躾な詮索をするなら八つ裂きにして殺す」

「おい、芥川！！すいません、コイツ何時もこうなんです。気にしないで下さい」

「八つ裂きに、ですか?出来る自信があるんですね?どんな方法でするんですか?」

『先刻から何なんでしょうか、煩いですね』

「Aさん!!」

『ただの店員が何なんでしょう?注文を聞いたなら即刻、戻ってください』

「安室さん、そろそろ戻りなよ」

「コナンくん……、分かったよ」