Give Me【HS】 (ページ8)

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「他の人にはあげちゃダメだよ？｣

「他の人はなんでもくれって言いません｣

ふん、とそっぽを向いてみる。

すると、ごめんねーと全く反省してなさそうな声色の謝罪。

自らの小指にはめて大層気に入ったようで、謝りながらも返す気はないのね。

「じゃあ、ヌナには俺のあげる！｣

そう言った彼は、自分の腕にあるいくつかのブレスレットの中からシンプルなものをひとつ選んで私に差し出した。

「許してくれる？｣

「貰えないよ！こんな⋯」

「衣装じゃないよ？俺の私物だから」

「そうじゃなくて、こんな高価なの⋯」

「なんだ、値段？あげたいからあげる。それだけ」

いつまでたっても受け取ろうとしない私に痺れを切らしたのか、私の手首を自分の方に引き寄せると抵抗する間もなくそれをつけた。

「これはもうヌナのだからね」

「⋯ありがとう」

「俺もありがとう」

彼の流れにすっかり巻き込まれて、そんな自分に呆れるしかない。

「もー、こんなにあげるのはホソクだけだよ⋯｣

「俺だけ？｣

突然、鏡を向いたはずの彼の顔が、ずいとほんの目の前に迫った。

その真剣な目に思わずたじろぐ。

「そ、そうだけど⋯｣

途端に、心底満足気に微笑んだ。

「俺もね、ヌナだけだよ｣

その言葉に、何故かは分からないけれどドキリと胸が高鳴る。

鏡なんて見なくたって、自分の顔が一瞬のうちに紅潮したことが分かった。

「ヌナ？顔が⋯」

「ほ、ほら！前向いて！メイク落とすから！」

精一杯、ごまかしてはみたものの、バレてないといいんだけど⋯

「はいはーい！ヌナの言うこと聞きます！」

にやにやと頬を緩めた彼は、珍しくすんなり前を向いた。