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____なんて、そんな都合のいい話があったら良かった。
確かに、これは過去の記憶なのだろう。だが、ただそれだけ。ただの、記憶。記憶だけが戻ってきてしまったのだ。
目の前で頭を垂れるのは、後輩の伊沢拓司であって、恋人の伊沢拓司ではない。この呪いを打ち切ると約束したのは過去の私であって、今の私ではない。
突然映画の感動シーンだけ見させられた、そんな感じ。
ああ、なんて救いの無い。そんな嘘みたいな話、一生気づかなければ良かった。
突如、視界が暗くなる。彼が私を抱きしめたのだ。私は抵抗しなかった。抵抗する術を持たなかった。
「…ねえ、お願い。思い出してよ」
「…」
「俺、このままおじいちゃんになっちゃうよ」
彼は、これからもガラスの靴を持ったままさまよい続けるのだろうか。いつかは報われるのだろうか。
わからない。私には何一つわからなかった。知る権利すら、ないのかもしれない。
私が、この青年にしてやれることは何も無かった。諦めさせてやることも、抱き締め返しすことも出来ない。唯一出来ることと言えば、いつの日かの私が彼を救うことを祈るくらいだ。
そのガラスの靴は、私のものではなかった。
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あああ(プロフ) - しるふぃさんさん» こちらこそご拝読いただきありがとうございます!!お楽しみいただけたようでとっても嬉しいです!ありがとうございました! (2020年6月18日 22時) (レス) id: 5e26c4a7ae (このIDを非表示/違反報告)
しるふぃさん(プロフ) - あぁ…!こういうのが読みたかったんです!!ありがとうございます…!ありがとうございます…! (2020年6月15日 22時) (レス) id: dbc8d18dc4 (このIDを非表示/違反報告)
あああ(プロフ) - Frölunda さん» ご拝読ありがとうございます!そう言っていただけてとっても嬉しいです!ありがとうございます!! (2020年6月1日 20時) (レス) id: fe2e5bcb5b (このIDを非表示/違反報告)
Frölunda - 最初の説明が英語だったから、英語で書かれた小説なのかなぁって思ったらめっちゃ感動した。しばらくはガラスの靴って聞くだけで泣けそう。すげぇ (2020年5月27日 20時) (レス) id: 86429bc0ce (このIDを非表示/違反報告)
あああ(プロフ) - ゆうかさん» 初めまして!最後まで読んでいただけて光栄です!お楽しみいただけたようでほっとしております…嬉しくなる感想をありがとうございました! (2020年5月25日 10時) (レス) id: e3106e5da9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あああ | 作成日時:2020年5月24日 1時