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「何か、って?」
「だから、その、」
何か言おうと口を開いては、言い淀み閉じる。言葉を選んでいるというよりは、言葉が見つからないという感じだった。
どうして、そんな顔をするの?わからないよ。どういうこと?私は、何か忘れてるの?それが、貴方をそんな顔にさせるの?苦しくて、辛くて、泣きそうな…
…泣きそうな?
「…そうだ、カチューシャ!カチューシャだ!!え、あれ、どこにやったけ、」
「…ふふ、相変わらずですね」
慌てふためく私に、へらりと笑う伊沢くん。彼の手には例のカチューシャが握られていた。
「いつの間に…!て言うか、まずはありがとうだね。ごめんすっかり忘れてた」
「全く、年甲斐もなくはしゃぐからですよ」
彼の辛辣な言葉に言葉が詰まる。
「…伊沢くんって結構言うよね」
「まあ、カチューシャ忘れたことに気付かないくらい楽しんでくれたってことですよね」
私の嫌味ををひらりとかわす伊沢くん。先程の表情が嘘みたいだ。魔法にでもかけられていたのだろうか。
「うん、とっても楽しかった!伊沢くんとは全然はじめましてって感じがしなくて、時間があっという間だったよ!」
「…俺もですよ」
「ほんと?ふふふ、嬉しいなぁ」
「また、来ましょうね」
「今度はちゃんと事前に言ってよね」
それを聞いて、彼は口をハート型にして笑った。
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あああ(プロフ) - しるふぃさんさん» こちらこそご拝読いただきありがとうございます!!お楽しみいただけたようでとっても嬉しいです!ありがとうございました! (2020年6月18日 22時) (レス) id: 5e26c4a7ae (このIDを非表示/違反報告)
しるふぃさん(プロフ) - あぁ…!こういうのが読みたかったんです!!ありがとうございます…!ありがとうございます…! (2020年6月15日 22時) (レス) id: dbc8d18dc4 (このIDを非表示/違反報告)
あああ(プロフ) - Frölunda さん» ご拝読ありがとうございます!そう言っていただけてとっても嬉しいです!ありがとうございます!! (2020年6月1日 20時) (レス) id: fe2e5bcb5b (このIDを非表示/違反報告)
Frölunda - 最初の説明が英語だったから、英語で書かれた小説なのかなぁって思ったらめっちゃ感動した。しばらくはガラスの靴って聞くだけで泣けそう。すげぇ (2020年5月27日 20時) (レス) id: 86429bc0ce (このIDを非表示/違反報告)
あああ(プロフ) - ゆうかさん» 初めまして!最後まで読んでいただけて光栄です!お楽しみいただけたようでほっとしております…嬉しくなる感想をありがとうございました! (2020年5月25日 10時) (レス) id: e3106e5da9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あああ | 作成日時:2020年5月24日 1時