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また明日、は瞬きもしない内に今日となった。明日は今日になるのだから、私たちは永遠に明日には行けない、と言ったのは誰だっただろうか。
隣の伊沢くんは、昨日とは打って変わって、朝から夢の国には似合わない、とても険しい顔をしている。
「どうしたの…?体調悪いとか?」
「いえ、大丈夫です。何でもありません」
「そう?…辛かったらすぐに言うんだよ?」
「はい。お気遣いありがとうございます」
てっきり夢の国が好きで誘ってくれたのだと思っていたが、どうやら違うようだ。じゃあ何故、と考えたところで、答えが出るわけでも、この何となく居づらい雰囲気が改善されるわけでもなく。
ふと、可愛らしいものが目に入る。そして閃く。
「伊沢くん、伊沢くん。ちょっと」
「はい?」
振り向きざまの彼に、すかさず黒い耳が二つ着いたカチューシャを取り付ける。眉間の皺とのミスマッチ度合いに、思わず笑いが込上げる。
「っはは!可愛い可愛い」
おずおずと頭の上に乗ったものを触る伊沢くん。そして、ぐっと、眉間の皺をいっそう深くした。
私はその表情に違和感を感じた。あの伊沢拓司がこんなことで、とすら思った。
え、何、そんなに嫌だったの?そんな、耐えるような、泣きそうな顔をする程?
「ご、ごめん!そんなに嫌がるとは思わなくて…」
「あ、いえ、全然。そういうことでは…」
「…ね、お揃いにしようよ」
「え?」
「折角来たんだしさ!ほら、難しい顔してばっかしてないで!」
楽しもーよ!と、自分の頭にもリボンが付いた種類違いのカチューシャをつける。彼は、一瞬呆気を取られるも、すぐにいつものようにへらりと笑った。
「そう、ですね。はい。そうですね、その通りですね!」
「うんうん!その調子!」
それからはショーを楽しみ、アトラクションを楽しみ、時間の流れはあっと言う間にだった。
伊沢くんは高所恐怖症らしく、ジェットコースターに乗った時の絶叫がキャーやワーといった類いではなく、高い高い高い高い!だったのが、私の中での密かなMVPだ。
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あああ(プロフ) - しるふぃさんさん» こちらこそご拝読いただきありがとうございます!!お楽しみいただけたようでとっても嬉しいです!ありがとうございました! (2020年6月18日 22時) (レス) id: 5e26c4a7ae (このIDを非表示/違反報告)
しるふぃさん(プロフ) - あぁ…!こういうのが読みたかったんです!!ありがとうございます…!ありがとうございます…! (2020年6月15日 22時) (レス) id: dbc8d18dc4 (このIDを非表示/違反報告)
あああ(プロフ) - Frölunda さん» ご拝読ありがとうございます!そう言っていただけてとっても嬉しいです!ありがとうございます!! (2020年6月1日 20時) (レス) id: fe2e5bcb5b (このIDを非表示/違反報告)
Frölunda - 最初の説明が英語だったから、英語で書かれた小説なのかなぁって思ったらめっちゃ感動した。しばらくはガラスの靴って聞くだけで泣けそう。すげぇ (2020年5月27日 20時) (レス) id: 86429bc0ce (このIDを非表示/違反報告)
あああ(プロフ) - ゆうかさん» 初めまして!最後まで読んでいただけて光栄です!お楽しみいただけたようでほっとしております…嬉しくなる感想をありがとうございました! (2020年5月25日 10時) (レス) id: e3106e5da9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あああ | 作成日時:2020年5月24日 1時