タイムリミット ページ46
.
しばらくサッカーの試合を見ていると、向こうから聞き覚えのある声が聞こえた。
JH「Aさーん！！」
「ジェヒョク君！どうしたの？」
ジェヒョク君は走ってきたのか肩で息をしている。
JH「じゅっと、探してました、
いっしょに帰りたいです、話したいことあって」
「話したいこと？」
.
なんだか、こうやってジェヒョク君と帰路を歩くのは久しぶりだ。
「それで、話したいことって？」
JH「あぁ、それが.....」
ジェヒョク君は言葉を詰まらせて歩みを止めた。
JH「....実は、ぼく、今年の夏に、引っ越すんです」
「......え？」
俯いて伏した目に、はらりと黒髪が掛かる。
ジェヒョク君が、元から転々としていたのは知ってはいたけど、まさか、またどこかへ行ってしまうとは想像もしていなかった。
「じゃあ、学校も変わっちゃうってこと...？」
JH「はい...」
両親の仕事だから、仕方ないですけどね、とジェヒョク君は悲しそうに笑った。
「....学校の寮じゃ、駄目なの？」
JH「...もう決まっちゃたことなので、」
「...そっか、」
あんまり、人の家の事情にあれこれ口出すのは良くないよね...
JH「......もちろん、もっとみんなと居たいです、」
ジェヒョク君はまた歩き始めると、もう一度笑顔を作った。
JH「でも、まだ時間はあるし！いっぱい話しますし、遊びます！Aさんとも、トモダチとも」
「.....うん、もちろん」
ジェヒョク君は、ほんとに強いんだな。
辛いはずなのに、いつもみたいに明るく振舞おうとしてる。
いや、というか、もはや慣れ過ぎてそうならざるを得なかったのかもしれない。
ジェヒョク君は、小さい頃からこうやってずっと、1人で抱えてきたのだろうか。
だとしたら、たとえ仕方がないとしても、あまりに負担が大きすぎる。
JH「あの__Aさん、」
ジェヒョク君はこちらを1度見ると、目を逸らした。
JH「や、なんでもないです」
「....どうしたの？」
JH「気にしないでください、大したことじゃないし」
ジェヒョク君は、頭をブンブン振ると、「マック、よっていきましょー！」と元気よく言った。
半ば空元気のようにも見えるジェヒョク君に、私は何も言えずただ頷いた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 380人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆう | 作成日時：2021年9月16日 7時
