糖分摂取 ページ44
.
?「私も....ハルトくんのことが好きなの」
「___え?」
.
『はい、えーお前ら、もう受験生なんだから、気引きしめてけよー。じゃー解散』
LN「今年の担任話短いじゃん、ラッキー♪」
斜め前の席のリナがカバンを肩に掛けながらそう言った。
今年もリナと同じクラス、これで高校3年間同じクラスということになる。
「リナ今日塾?」
LN「今日はー....げ、火曜日ってことは塾じゃん、課題してないんだけど!」
どんまい、と声を掛けると、早めに塾行って課題してくる、と心底嫌そうな顔をして教室から出ていった。
私は、今日に限ってバイトもない。
というか、私も塾に行った方がいいのかなー。
勉強ができない訳では無いけど、自分だけで受験勉強を完璧にこなせるとは思えない。
まあとりあえず今日は、暖かくもなってきたし、中庭のテーブル席で勉強するか。
中庭に着くと、花壇のチューリップとパンジーが色とりどりに咲いている。
今日は人通りが少なく、集中して勉強に取り組めそうだ。
「喉乾いたな」
んしょ、と席を立って、向かいの渡り廊下にある自販機に足を運んだ。
勉強の時は、糖分をたっぷり含んだ甘いものが飲みたくなる。
「甘いもの...んー、ホットは熱いし...」
炭酸飲料はあるけどなんか違うよな、と思っていると、横から白くて細い手がスッと伸びた。
「あの、すみません、先に買ってもいいですか......?」
控えめそうな小動物系の子が、まん丸の瞳で私を見上げる。
「あ、はい、全然どうぞ」
もしかして後ろにずっと居た?
慌てて横に掃けると、その子は右上のボタンを背伸びして押した。
てか、いちごオレとかあったの気づかなかったんだけど?!
ありがとう....!女の子!!
名前分からないけど、えっと名札....スミちゃん!
SM「どうかされましたか......?」
名札を凝視している私を、少し不安そうな顔をして彼女が訊いた。
「あっすいません!いちごオレいいですね!」
な、何言ってんだ私...!もっと怖がらせたらどうすんのよ....
SM「美味しいですよね、いちごオレ」
小さい手でいちごオレを握りながらそう言ったスミちゃんは、なんというか、全てを浄化していくような、清廉潔白の、淀みひとつない笑顔だった。
名札の色が一緒な所を見るに、この子は同学年なのだろう。
にしても、こんな天使みたいな子がいたとは、全く知らなかった。
.
380人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「TREASURE」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ゆう | 作成日時:2021年9月16日 7時