豆腐 ページ5
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げっ。
ゆっくりと横を見上げると、背の高い目鼻立ちのくっきりとした男がこちらを睨んでいる。
.......ような気がした。
「あ、あの」
「なんすか」
うわ、感じ悪っ。
「俺が先に取りましたよね」
そう言って私から豆腐を乱暴に奪い取ると、自分のカゴに投げ入れて立ち去ろうとした。
...な、何なんこいつ!!
もちろん、ここで黙っている私ではない。
奴を追いかけてカートの前に立ちはだかると、腕を組んで睨み返した。
「ちょっと、初対面のくせに失礼すぎません?」
「邪魔っす」
「.......はぁ!?もう1回言ってみ___」
「つか同じ高校ですね」
「.....え?」
ほら、と奴が黒いパーカーを横側へぴらりとめくると、見事に今私が着ているジャケットと一致した。
「じゃー失礼しまーす」
私が呆然としている間にそいつはさっさと行ってしまった。
「ただいまー」
「お、おかえり。豆腐は?」
「もう売り切れてた」
「豆腐が売り切れ、、?あんた買いに行ってないでしょ」
「行ったよ!ほんとになかったの」
「ふーん、あっそう」
まあ冷奴だし無くてもいっか、とお母さんはまた台所と向き合った。
あーもう!!
それにしても、何回思い返しても腹が立つ。
しかも同じ高校だって??
冗談じゃない、もう二度と関わりたくないね。
LN「ねえA、今から男子が1年対2年でサッカーの試合するって!見に行こーよ」
「サッカー?...私パス」
LN「えー、なんでよ」
実は、私の元カレの浜田アサヒは、まさしくサッカー部だった。
あれほど目を奪われて夢中になっていたのに、今じゃサッカーさえなんとなく見れなくなっていた。
LN「ねーお願い!私の推しが出るんだよぉ〜」
「.....んーもう、しゃーないな」
まあ、極力見ないようにスマホでも扱ってりゃいいか、と重い腰を上げた。
LN「やばい、もうすぐ始まるよ」
「ふーん」
ふと顔を上げると、グラウンドの真ん中で腕を回してアップをしている人の横顔にはっとした。
まさか、
まさかまさか、あいつは昨日の......!!!
そう思っている間に試合の始まりの笛が鳴り、女子たちの黄色い歓声が巻き起こった。
LN「わー始まった!!あ、さっき左に並んでたのみんな1年だよ!」
「左が1年、、」
てことは、奴は一個下?
年下にあんな態度とられてたわけ??
ますますムカつく、、!!
LN「わ!A、今決めた人私の推し!!見た?!」
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作者名:ゆう | 作成日時:2021年9月16日 7時