. ページ39
.
｢......お姉さんだったの？｣
私は呆気に取られた。
あの女性がお姉さんだったことも、ましてひーくんにお姉さんがいたことも知らなかった。
AS｢別に隠しとった訳やないけど、Aと姉貴、会う機会もなかったから知らんかったよな｣
確かに、会うことはなかった。
でも、なんで？
ひーくんの家にも何度かお邪魔したのに、1度も会わなかったのはどうしてだろうか。
そんな私の疑問は、すぐに消え去った。
AS｢俺の姉貴、ずっと入院してた｣
｢......え？｣
AS｢姉貴は、ちっちゃい頃から病気やった。でも前までは、定期的に通院する程度やったし、病気には見えんぐらい、元気やった｣
ひーくんは続ける。
AS｢けど、2年前に容態が悪化して。家に帰れることはほぼ無くなった。それでも絶対良くなるって信じてた。信じるしか無かった｣
AS｢......でも、そっから良くなることはなかった｣
ひーくんの顔が、一瞬こわばった。
AS｢お見舞い行った時、毎回笑顔でさ、それなのにどんどん痩せていってて、｣
AS｢__あの日が、最後の外出許可が降りた日やった｣
AS｢姉貴が、甘い物食べたいって言うから、沢山食べちゃダメだから一口だけパフェあげてさ、、そしたら、世界でいちばん美味しいって......っ そう言われたとき、ああ、もう二度とこうやって美味しいもん一緒に食べられへんのかなぁ、って思ったりして、それで____結局、二度目はなかった。
最後に食べたのはその、甘くて苦い抹茶パフェ、それだけやった｣
気づけば、ボロボロ泣いていた。
さっき、涙は枯れたはずなのに。
どうして私に相談してくれなかったの。
隠すぐらいなら、話してよ。
前までは、そう思っていた。
でも、今は、そんなこと思えるはずがなかった。
私が、彼の心に寄り添っていたら、少しでも結果は変わっていただろうか。
彼の支えに、微力でもなれていただろうか。
でも、今となっては遅すぎた。
本当のことを知った今でも、私は慰めることしか出来ない。
AS｢あの日、約束守れんくて、ごめんな｣
真っ赤な目でそう言う彼を、真っ先に抱きしめた。
私が不安だった時そうしてくれたみたいに。
｢言いづらいこと、話してくれてありがとう｣
きっと、彼一人で抱えるには、あまりにも辛すぎた。
今はただ、すれ違った私達の気持ちを少しでも埋めるために、ひたすら抱きしめ合った。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 380人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「TREASURE」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆう | 作成日時：2021年9月16日 7時
