幸せになって ページ37
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家からさほど遠い訳では無いのに、こうやって実際に来たのは本当に久しぶりな気がする。
夏には緑の葉っぱが生い茂っていたはずの木々も、今や葉のひとつも残らず、裸のままそこに突っ立っている。
2人分のブランコと、小さな砂場、そして、離れた場所にぽつりとある丸太のベンチ。
彼はそのベンチに、以前よりも小さくなったように見える背中をこちらに向けて座っていた。
今朝、本当に悩んだ。
会いに行けば、また同じようなことになるかもしれない。
そんな不安があった。
でも、あの再開した日のひーくんは、何か訴えかけるような目をしていて、どうしても、行かない訳にはいかなかった。
また彼に会いに、私は来てしまった。
深く息を吸ってゆっくりと吐くと、彼の元へと歩く。
「....ひーくん、」
AS「......A、来てくれると思わんかった」
ひーくんは僅かに口角を上げた。
その彼の顔を見た瞬間、昔のひーくんの笑顔が思い浮かんだ。
屈託がなくて、感情をそのまま表したような、彼の笑顔。
でも、今目の前にいるひーくんは、あの頃のひーくんではなかった。
太陽のように明るかったのに、なんだか雲がかかって、翳っていた。
「話って....何?」
思い切って切り出すと、ひーくんは目を伏せてただ言った。
AS「_____A、絶対に幸せになってな」
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作者名:ゆう | 作成日時:2021年9月16日 7時