再会 ページ20
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ほんとになんなの、この状況。
HT「うぉっしゃあぁぁ!!!先輩見ましたよね?!うぇええい!!」
一切の摩擦なく滑りゆく硬いボールがぶつかると、10本のピンが豪快な音を上げて後方に飛ばされていく。
そう、ここはボーリング場だ。
なんでまたボーリングをしに来たかと言うと、ちょっと理由がある。
あれから最悪な雰囲気のまま駅まで歩いてたら、ハルトがお腹空いた、などと言いだし、ファミレスに行ったあとカラオケを提案されたが私が却下して、最終的にここにたどり着いた。
JH「ちゅぎAさんの番、」
「あ、そーだ」
重い腰を上げて、ボールに指をはめる。
「ふんっぬ!」
思いっきり投げたのはいいものの、中間地点ぐらいでガーター。
HT「ぶ、やっぱりA先輩はA先輩っすね」
「あ?」
HT「いや、えーと、上手いっす」
「嘘つけ」
それから着々と試合は進んでいき、私を除いて2人は一進一退の攻防を繰り返した。
「あ、同点だ」
2人とも残り1球になったところで、あろうことか同点になった。
JH「Aさん、」
「ん?」
JH「もし、この試合__」
HT「おい」
ハルトが遮ったので、ジェヒョク君の言葉が聞こえなかった。
HT「それ以上は言わせねーから」
また2人とも怖い顔して、今度は何事?
さっぱり事の次第が分からずにいると、ハルトはボールを軽々と持ち上げた。
HT「先輩、見ててよ」
くいっと口端を上げてそう言われて、コクリと頷くしか出来ないでいると、ふと声が耳に入った。
「......A?」
突然呼ばれ、心臓がどくりと跳ねる。
今1番聞きたくない声が、後ろから確かに聞こえた。
でも呼ばれたからには、無視する訳にはいかない。
ゆっくりと振り返ると、そこには前より少し髪が伸びて、右耳にピアスを揺らして、それでもあのころと変わらない瞳で私を見つめる彼の姿があった。
「............ひーくん」
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作者名:ゆう | 作成日時:2021年9月16日 7時