モーニングコール ページ13
"おい、A起きてる？！"
｢ん〜、起きてるよ〜｣
"電車来るまで30分しかねぇって！ダッシュ！"
｢、、え？！｣
うわ、終業式で遅刻したらやばいじゃん！！
すっかり目が覚め、勢いよく上体を起こす。
ヨシくんとは、普段家が近くて登校はよく一緒にしているのだが、冬になると毎年朝に電話をかけてくれる。
そうでもしないと私が起きられないからだ。
冬は寒くて外に出たくなくて、なかなか布団から出ない私を、起きるまでしっかり起こしてくれるヨシくんに毎度のごとく感謝している。
｢ごめんヨシくん、間に合いそう！？｣
慌てて玄関から飛び出すと、サドルに跨ってるヨシくんが白い息を吐いて待っていて、本気で申し訳ない気持ちになった。
YS｢ギリだけどいける...あ、Aストップ｣
ちょっと来て、と私の垂れ下がったマフラーをクルクル巻いてくれた。
YS｢ほれ、後ろ乗って、ちゃんと掴まって｣
｢うん｣
自転車の荷台に乗ると、ヨシくんの腰にぎゅっと捕まる。
吹きつける風は肌に突き刺さるほど冷たいけど、ヨシくんがカイロみたいに暖かくてなんだか心地がいい。
ヨシくんが爆速で漕いでくれたおかげで、何とか電車に間に合った。
｢まじありがとね、ヨシくん｣
YS｢Aほっとけねぇんだから｣
｢..ねぇ、ヨシくんってなんでこんな優しいしイケメンなのに彼女出来ないんだろうね｣
YS｢うっ、うっせーな、これでも結構告られてんだからね？｣
｢え、まじで？｣
普通に初耳なんですけど。
YS｢俺が全部断ってるだけだから｣
｢えぇなんでよ｣
YS｢だって...俺、好きなやついるし｣
｢好きな人いんの？！｣
これまた初耳なんですが？？
ヨシくんにも好きな人がいたなんて、、
｢誰その子？私全力で応援するよ｣
YS｢....はぁ、Aはなんもしなくていいから｣
｢いやいや、遠慮しなくていいよ？これでも私__｣
急に腕をグイッと引っ張られ何かと思ったら、｢後ろ、チャリ｣と反対側の腕に引き寄せられた。
そのときふと、ヨシくんの手首あたりから香水の匂いがしてるのに気づいた。
今までは柔軟剤みたいな自然な匂いしかしなかったけど、今のは甘めの、明らかに香水の匂い。
ヨシくんもつけたりするんだ、と意外な気持ちになった。
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作者名：ゆう | 作成日時：2021年9月16日 7時
