退職十二回目 ページ14
無事ターゲットを殺り終え、真っ赤に濡れた手を見つめてため息をはく。
けたたましくなり響く警報音にうんざりしながら予め確保しておいた脱出経路へと歩みを進める。
こいつを殺るのも何回目だと思いながらあっけなく終わる任務にあくびを漏らす。
「退屈だな」
なれてしまったこの作業に似た仕事と自分の異能に嫌悪しながらも歩みを止めることはない。
ここから一刻も早く立ち去りたい。
あの人の場所へ行きたい。
はやる気持ちを押さえて今へまをすれば意味がないと言い聞かせる。
「俺は、約束を守らないといけないんだ」
半ば強迫観念にも似た言葉をはいてその場所を後にする。
俺にとって何よりも大切なこと...あの人との約束を必ず果たさなくてはならない...
「そのためにはまず俺が死んだことにしないとな...」
薄い笑みが浮かぶ。
ここまでは順調だ。きっとうまくいく...うまくいかないといけないんだ。
でなければ俺の心は壊れてしまう...狂ってしまう...
すでにちぐはぐなこの心が壊れれば俺はどうなるのだろう?
きっと先に待っているのは死だけ...
「俺は何でこんな無意味なものを持ってるんだ?」
己に絡み付いた異能に疑問が漏れる。
何も救えないならなければよかった。
何も変えられないなら知りたくなかった。
そんな身勝手な願いは通りやしない。
「このすべてが神様の思う通りなら俺はアンタを心底憎むよ」
そう呟いて血塗れの手を洗い流し返り血で染まった服を廃棄する。
荷物をまとめてとある知り合い...人の死を偽装することに長けたこちら側の人間に電話を掛けた。
「久しぶり、いきなりだが俺の死を偽装してくれ」
そうあっけらかんに言うと電話越しに不機嫌な声が響いた。
「唐突過ぎるわボケ...んで?どういう感じがいいんだ?」
「話が早くて助かる。まぁ、取り敢えず辛うじてわかるくらいに損傷させた死体をよろしく」
不機嫌だが仕事の早いそいつに感謝しつつ軽口を叩きあってから電話を切る。
俺が電話を掛けた相手はまた後々わかるだろう。
どうせ俺も太宰と特務課に世話になるのは変わらないからな。
ーー
お久しぶりです。
ドキドキ新キャラの登場ですね笑
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