Legend Story5 (ページ8)

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晃一side

良亮に抱えられたまま家へと帰ってきた俺は、ソファーに寝かされた。

頭では呼吸しないとって分かっているのに、呼吸の仕方が分からない。

息ってどうやってするんだっけ…

喘息みたいに喉が締まっている感覚はないのに、身体が酸素を受け付けない。

「はっはぁッ__ゼーッゼーッ…」

郁人が服を寛がせてくれたけど全く改善されなくて。

手が痺れてきた。

やばい、これはまずい。でも、どうしたらいいかわかんない。

目の前の郁人もどうして良いか分からず呆然としていた。

苦しさに泣きそうになっていると、突然すごい力で頭が支えられる。

祥太が俺を抱えるようにして紙袋を口元に押さえつけていた。

「…や、っ…ッはっはぁっ…」

必死で抵抗してみるけど、酸素が回ってなくて自由にならない身体じゃほとんどなんの抵抗にもなってなくて。

されるがままに祥太の腕の中で必死に呼吸を繰り返した。

「っはぁはぁ…はぁ、はあ……」

そしたら、徐々に深く吸えるようになってきて。心臓がドクドクと音をたてて動くのが聞こえた。

苦しさからぎゅっと瞑っていた目を開けると、祥太が俺の髪をすくように撫でて。そちらを向いてみると、祥太と郁人が心配そうに俺を覗きこんでいた。

「…晃にぃ、過呼吸だよ。…なにか、無理してるんじゃない?」

祥太が、俺の目を見据えてそう言う。

間違いなく原因は分かってるけど、弟たちにそんな心配かけたくなくて、返事もせずに二人に背を向けた。

「…寝るの？」

郁人の声に頷いて目を閉じる。

さっきの過呼吸のせいか、喉になにか引っ掛かってるみたいな違和感がとれなくて、けほけほと何度か咳き込んでみる。

「けほけほっ…__っはぁ…」

最近は自分の身体どころじゃなくて、それでも少し違和感があったから、癖みたいに吸入は続けてた。

ぐるぐる色々と考えていたら、夜中に苦しくなってきて慌てて頓服を流し込んだりもした。

吸入が最後の一回だって気づいたのは、そのラスト一回を吸い込んだ後で。

「…けほけほっ……」

病院に新しいのもらいにいかなきゃ…

でも店は？閉められない。今閉めたら負けな気がした。

店は意地でも開けつづけてやると決めている。

そうだ、頓服もなくなったんだった…

発作起こったらどうしよう…

っていうかこのままだったら絶対起こる…

「…もう、いいや」

あのときは、考えることを止めてしまったんだ。