Legend Story5 (ページ5)

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祥太に返信するかなーって考えてたら、ちりんと入り口の扉が音をたてた。

「いらっしゃいませー…、あ…」

クレーマーのおばさんが、キツい匂いを引き連れながら店内へと足を踏み入れる。

「ちょっと、あんた。そこ私の席だから退いてくれない!?」

良亮が座っていた席まで歩み寄ると、その一言で良亮を退かして、良亮はびびったのかカウンターの中へと逃げてきた。

「うひー、おっかねえおばちゃんだね」

こそっと俺に耳打ちをする。

そうだな、なんて返事をする余裕もなく、俺はその人に今日は何を言われるのかと考えていた。

お冷を出すと、一瞥して口をつけもせずに顔をしかめる。

「コップが汚いわよ。泡がついてるじゃない」

こんこんと机を爪で叩いて、俺を睨んだ。

「本当にどうしようもない店ね。
町中に言いふらしておいたから。この店だけは絶対に行くなって」

最近、この人が店内に居座るせいで、常連さんも足が遠のいているのは事実だった。

それなのに、その上変な噂まで流されて。

このままだと、色々な思い出が詰まったこの店が潰れてしまう…

「っ__!!……」

悔しさか悲しさか、俺は言葉にならない感情を噛み締めて、カウンターへと戻った。

遠くであの人が何かを言っている声が聞こえるけど、何を言っているのかは分からない。

「___!!はぁっ…ハァハァ…ッく……!!」

なんだこれ…喘息の発作とはまた違う苦しさが突然俺を襲った。

「…っはぁっ、っひッ…」

喉がひきつった音をたてて、呼吸を阻む。

「…っ、はぁっ…はぁはぁ…っ…!!ゲホゲホっ__!」

「晃にぃ!?!?」

身体に力が入らなくなって崩れ落ちた俺を寸でのところで受け止めてくれたのは、良亮だった。

「晃にぃ、大丈夫!?どうしたの!?!?」

なんだこれ、どうしたらいいんだ。

変に冷静な頭が呼吸しろと身体に命令しているけれど、身体は全く酸素を受け付けないかのように息ができない。

「っは…はぁハァ……ッく、っ…はぁっ…」

頭が徐々に真っ白になっていって、手先に変に力が入って痺れてきた。

「晃にぃ、ゆっくり息して!今家戻るから！もうちょっと頑張ってよ!!」

良亮が俺の脇と膝裏に腕を差し込んで、いわゆるお姫様だっこの形で俺を抱えあげる。

店いたはずのあの人はどうするんだとぼんやりした意識で店内を伺ったけど、あの人は何かの騒ぎを察知して早々に姿を消していた。