Legend Story5 (ページ38)

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「やだーっ!!!!」

僚にぃの大きな声に、ベッドに腰かけて吸入のもくもくを吸っていた晃にぃが苦笑いを溢す。

「こういうとき、祥太はゆっくり眠れていいな」

晃にぃの向かいのベッドで寝息を立てる祥にぃを見て、またけほけほ、と咳き込んだ。

俺はその晃にぃにへばりつくように抱き付いている郁人の背中をとんとん、と宥めながら、首を伸ばして隣の診察室を覗きこんだ。

「ほら、一瞬だから大丈夫だよ。」
「やだ！先生いたいことするもん！」
「痛くないよ、この綿棒で鼻の奥少しこちょこちょーってするだけ」
「うそだ！しょーちゃんもふみとも痛いって言ってた！！」

うろうろと先生から逃げ回る僚にぃと、検査用の長い綿棒を持って困り顔の先生。

病院はけっこう混んでいて、少し待たされたから元から僚にぃは少し不機嫌だったんだ。

それなのにインフルの検査をする、ってんでもう大騒ぎ。

暴れる気力もない祥にぃはすぐに終わって、今隣のベッドで解熱剤の点滴中。

「…べつに、痛くなかったし」

まだ涙目の郁人が、ずび、と鼻をすすりながら強がっているけど、郁人は郁人で痙攣防止の座薬を入れられることが決まっているから拗ねてるんだ。

さっきから晃にぃがだらんと垂らしている点滴の繋がる左手を、自分の点滴の繋がっていない右手で落ち着かないようににぎにぎしている。

晃にぃは郁人のベッドに腰かけて、気管支拡張剤の吸入中。
痰がだいぶぜろぜろしてたみたいだしね。こっちも喘息発作の予防。

吸入の煙が出てる管に顔を近づけて吸いながら、部屋に響き渡る僚にぃの声に顔をしかめていた。

三人とも熱が高かったから点滴しようね、ってなって先に検査を受けたんだけど、それが逆に僚にぃを不安にさせちゃったみたい。

検査慣れしてる晃にぃですら条件反射で鼻の奥まで突っ込まれた瞬間ピクッと反応してたし、郁人と祥にぃなんかそんなに騒がなかったけど終わった瞬間涙目だった。

それを見てしまった僚にぃは、なんでけっこう熱あんのにそんな元気なの？ってくらいに拒否ってる。

「…良亮、頼んだ」

晃にぃがぽん、と俺の肩を叩く。

「おれ！？」
「うん、お前しかいない。僚一もはやく休ませてやりたいし」
「うー…わかった」