Legend Story5 (ページ25)

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良亮side

久しぶりに食べるうどんは予想以上に美味しくて、一気に吸い込むように平らげた。

晃にぃの分を作っといてくれと頼まれたことを思い出して、キッチンへと向かう。そこには、まだ湯気のたっている素うどんがひとつ置いてあった。

「あれ、これは郁人のぶんかな？」

あったかいうちに食べた方が絶対美味しいし、このままだとうどんがのびちゃいそうで。
俺はトレーに素うどんを乗っけて取り皿と箸を持って郁人の部屋に向かった。

部屋の前まで来てドアを開けようとしたその時。本当に何となくだけど、開けちゃいけないような気がしたんだ。何となく、扉に耳をくっつけて中の様子を伺う。

「今のうちにしといた方がいいって。間に合わなくって失敗したら嫌なの郁人だろ？」

子供に語りかけるように優しい晃にぃの声だ。
疑問系なのに郁人の返事がない。

なんのことを言っているのかは、だいたい想像がついた。

「今なら良亮いないし。俺がやるから。な？ほら、腕上げて」

持っていたドアノブを離す。今俺は部屋に入っちゃいけない。

足音をたてないようにそっと部屋を離れた。

キッチンに戻り、鍋を火にかける。
さすがに素うどんはないだろうと、卵を落としたうどんを作った。

郁人は下半身不随で、いくらしっかりしていても絶対介助なしじゃ生活できない。忙しいほかのみんなの代わりに俺が郁人の手伝いをしてあげたいのに、今でも郁人は俺に全部を頼ってくれないんだ。
俺が頼りないからなのかもしれない。

どれくらい時間がたったのかはよく分からないが、うどんがくたくたになっているのに気づいて、慌てて火を止める。

新しくお椀を取り出して、うどんを盛り付けた。

トレーに新しく作ったうどんを乗せて、再び郁人の部屋に向かう。

もう一度様子を伺うように耳をそばたてると、中からは何一つ物音がしなかった。

ブンブンと首を振って、気持ちを切り替える。
勢いよくバーン！と扉を開けた。

俺が持ってきたうどんが晃にぃが作ったやつじゃないのを指摘されて一瞬焦ったけど、俺にしては良い言い訳が出来た。

案の定郁人はずっとそっぽを向いていて、晃にぃは出ていく寸前俺に「後は頼んだぞ」ってすげーちっせえ声で呟いた。

あーあ、晃にぃまたこれだいぶへこんでんね。