Legend Story5 (ページ23)

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良亮が部屋に戻ってきたら、付き添いをまた変わってもらって部屋を出る。

とりあえず郁人が落ち着いてるうちに俺たちのご飯を済ませてしまおう。
そう思っていつもより念入りに手を洗い台所に立つ。

吐くにしても何かお腹に入ってないとしんどいだろうし、少しでもお腹に優しいものをつくろうと、冷凍のうどんを温めた。

良亮の方には心ばかり天カスとちくわを多目にいれて、郁人の方はなるべく食べやすいように素うどんに。

良亮を呼びにいって、先に食事を取らせる。

「これ食べ終わったら、俺の分も作っといてくれない？俺、郁人んとこいるから」

「りょーかい！」

そう言い残し、良亮がうどんをすするその間に、トイレの上の棚からおむつとウェットティッシュを取り出し、それを手に郁人の部屋へと戻った。

「郁人、起きて」

少し熱が出てきたような郁人の肩を揺する。

「んん…、」

「下痢始まる前におむつしようね。腕お腹の上で組んで」

「……いや」

やっぱだめか。寝起きのボーッとしてる間ならなんとかなると思ったんだけどな。
郁人は一気に潤んだ目を背け、プルプルと肩を震わせながら荒い息を吐き出した。

「今のうちにしといた方がいいって。間に合わなくって失敗したら嫌なの郁人だろ？」

なるべく優しく、説得するように郁人に語りかける。

郁人はそんな俺を見上げ、唇を噛み悔しそうに恨みったらしい目を向けた。

「今なら良亮いないし。俺がやるから。な？ほら、腕上げて」

郁人は何も反応を示さなくなった。目をぎゅっと瞑ったまま、俺にされるがままお腹の上に腕を置く。

悔しげに歪められた目尻から一筋涙が零れ、固く握りしめられた拳は白くなっている。

良亮は食事が終わっても俺の分の食事を作ってくれるよう頼んであるから、時間稼ぎはできるはずだ。ぎゅうと目を瞑って辛そうに顔を歪める郁人に、さっさと終わらせてやりたいと、ひたすら手を動かすことにした。

こうやって悔しそうに郁人が涙を流して拳を握りしめる姿を、俺は何度見てきたことだろうか。

いつも１人だけ我慢しなきゃならないことも、やりたくないことも、いっぱいあったはずだ。