Legend Story5 (ページ17)

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晃一side

「晃にぃー!これ、こっちでいいの?」

「うん、いいよ。良亮に任せる」

朝早くから、ただいまカフェをハロウィン仕様にデコレーション中。

退院して一週間。ようやく店を本格再始動できる日がやってきた。

カフェの制服を身に纏った良亮があっちこっちとばたばた走り回っている。

俺も仕込みでちょっと手が離せないくらい忙しいのに、真ん中の弟たちは店のすみっこでコーヒーを飲みながらその姿を眺めている。

おいおい、無理すんなって散々釘差しておいて…

「…ちょっとそこの弟たち、手伝ってくんねーの?」

視界の端にチラチラと写るその姿に我慢できなくなってそう言うと

「おっ、ついに晃にぃから『手伝って』って言葉がでたぞ!!」

郁人がニヤニヤと嬉しそうに呟く。

「祥ちゃん、もういい?いいでしょ?」

僚一は、脚立に登って蜘蛛の巣を張っている良亮の元に飛んでいった。

その言葉の意味がどういうことか分からず思わず頭にハテナマークが浮かんでいると、祥太がカウンターへと近づいてきた。

「ごめんね、忙しそうなのはずっと気づいてたんだけど。
今回は晃にぃのあまりの我慢強さが裏目に出たと思うんだ。」

にこりと笑って、俺を指差す。

「俺らも今まで晃にぃを甘やかしすぎていたことを反省してさ」

…なんだよそれ。
まあ甘やかされていた自覚はあったけど

「晃にぃが、『手伝って』とか『助けて』を言うまで一回何も手助けしないことにしたんだ。」

「祥にぃの案だからね、これ」

「『手伝って』の練習だよ」

「…じゃあ『手伝って』、っつったらやってくれんだな?」

そりゃもちろん、と頷き二人で笑い合う郁人と祥太に布巾を投げつける。

「郁人はテーブル拭いて!祥太は裏にホウキあるからゴミとホコリの掃除!!」

「うわっ、人使い荒っ!」

うきゃきゃと笑って離れていった郁人を見送り、祥太もホウキを手に戻ってくる。

「でも、本当に晃にぃにはもっと俺らを頼ってほしいんだ。
今回みたいになる前に、もっと早くに俺らに助けを求めてほしい。一緒にいるんだから」

祥太の真剣な眼差しに、思わず仕込みの手を止めた。

まだ何かを言おうとしている祥太の手を取って、ぎゅっと握る。

「…ごめん。次からは、ちゃんと言うから」

にこりと満足げに笑った祥太の手を離して、ホウキを握らせる。

「じゃあ、掃除よろしくね?手伝ってくれんでしょ?」

にやりと笑ってそう言うと、祥太はさすが…と苦笑いしながら掃き掃除を始めた。