54' 郁人side ページ33
ぐすぐすと泣く良亮の声を聞きながら、ゆらりと浮かんだ意識。
さっきから全く意識がないわけではないけれど、遠くなったり近くなったり。
ゆっくり目を開けると、ぐにゃりと歪む視界の中に良亮がいた。
「……りょうすけ…」
振り絞った声はガサガサですごく小さい。
あー、のどいてぇ…
頭もいたいし、呼吸も苦しい。
良亮は泣き腫らした顔を俺に向け、またポロリと涙をこぼした。
俺が、天国に一番近い島に行こうって言ったばっかりに。
また俺は大事な"友達"をここまで苦しめたのか。
生まれてから俺は、人を苦しめてばかりして生きてきた。
しんどいと一言溢しただけで泣きそうになる晃にぃや、俺がいるせいでいつも疲れた顔をしているとっつー。
幼い頃は治ったら僕がやってあげるよ、なんて夢見ていたけれど。
白いベッドの上で、いつのまにか夢の見方も忘れてしまった。
陽に当たらないように、効くかどうかもわからない薬の繰り返し。
発作が起きて死にかける度に、もういいやと諦めかけて、それなのにまた引っ張り戻される。
唯一俺が外の世界に出ることを許されたのは、月が出ている夜だった。
ただし、車イスを使って無理せず行くことと、止められたら我慢すること、月が出ていない曇った日は行かないこと、そして迎えがあったら帰ることを条件に。
今日も、月は出ている。
満月は俺に寝てろとも言わないし、悲しそうな顔もしない。
満月を見るのが、俺の唯一の生き甲斐だった。
「郁人…起きてる？」
「…ん?……ケホッ…」
「俺たちこのままどうなるんだろう…」
何かの木に凭れた良亮は、俺の頭を太ももに乗せて、俺の胸をゆっくりとなで続けてくれていた。
それだけで、少し呼吸は楽になる。
多分、良亮は俺に答えを求めているんじゃないだろう。
そよりと風が吹いて、頭上の葉っぱたちがざわざわと音をたてた。
俺も別に聞いてほしい訳じゃなくて、でもなんか話したくなったから、さっき自分の病気の話をした。
そんなときは、誰にでもあるんだ。
「…もう俺、病院もどりたくねーよ……」
どれもこれも、全部独り言。
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しろくま(プロフ) - 本当に面白かったです！！ （；＿；） (2015年7月7日 23時) (
レス) id: 694ddb8fb5 (このIDを非表示/違反報告)
若葉(プロフ) - とまとさん» 初めまして!読んでいただきありがとうございましたm(__)m本当ですか!?嬉しいですー!難しいテーマを書いている意識は自分ではなかったんですが…!(笑)あ、これは完全に間違いです…(汗)Σ(゜Д゜)ご指摘ありがとうございました。直しておきます。 (2015年6月29日 17時) (レス) id: 7270f51a93 (このIDを非表示/違反報告)
若葉(プロフ) - 山風英斗∞ジャスミンさん» コメント、ありがとうございます(*´ω｀*)私の書くお話で感動したと言ってくださるなんて、とっても嬉しいです!!コメント下さったうえに、いつもお世話になりまして…英斗さんも頑張って下さい!これからもよろしくお願いいたします (2015年6月29日 17時) (レス) id: 7270f51a93 (このIDを非表示/違反報告)
若葉(プロフ) - nao3819さん» なんと勿体なき御言葉…ありがとうございますm(__)m本当に悩んだ末のラストだったので、物足りなさを感じさせてしまいすみません。色々想像してやって下さい。アメジストにお付き合い頂きありがとうございました。 (2015年6月29日 17時) (レス) id: 7270f51a93 (このIDを非表示/違反報告)
若葉(プロフ) - コメント、ありがとうございます!悲しいお話を目指したつもりだったので、そう言っていただけると本当に嬉しいです(´・ω・`)読んでいただき、ありがとうございましたm(__)m (2015年6月29日 17時) (レス) id: 7270f51a93 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：若葉 | 作成日時：2015年6月1日 19時
