星降る空へ (ページ5)

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咲かぬ花 IV ページ5

クラス替えで、まぁまぁ仲が良かった友人たちと離れ離れになった。周りの人達は顔の見知った人達だったらしく、俺は話についていけず、自然と1人になってしまった。
そんな時。
1人の男子がそれに気付き、話しかけてくれた。

「お、初めて見る顔。俺木花明人」
「……雨宮鈴」

「よろしく」と微笑む彼に、俺は目が離せなかった。
明るくて、クラスのムードメーカー。
話す度に明人の事が知れて、嬉しいと感じると同時にどんどん惹かれていった。
目が合っただけで顔に血が集まって熱くなるし、話す時なんて緊張して、他の人と話してるところを見たら、少し、胸が痛くなって。
これがなんの感情なのか自覚した時は「否定されるかもしれない」と思いつつも、伝えたいという気持ちが日々重なっていった。

中学2年生。二学期半ばのこと。
放課後。明人を呼び出し、2人きりの教室で、明人に俺の気持ちを伝えた。
顔が見られなくて、ただ俯いたまま、明人の答えを待った。

「……きっも」

数秒の沈黙。
その後、聞こえた言葉に、俺は一瞬息を忘れて様子を伺うように明人の顔を見る。
眉をひそめる彼の顔には、言葉通りの感情が浮き出ている。

「…お前、今までそーいう風に俺の事見てたの？気持ち悪いから、やめてくれ」

そう言い捨て、早足で去る明人の後ろ姿を、俺は静かに見送る。
勿論、付き合えるとか、そういう願いが簡単に叶うなど思ってない。
分かっていても、それからというもの俺の気持ちはずっと沈んだままだった。
それからだ。
明人はその出来事をクラスのみんなに話してしまった。
朝来た時には、俺はみんなから蔑むような顔で見られ、机の上はゴミで荒らされていた。
いじめられる理由は分かる。その理由が悪いことかと問われれば、俺はそうは思わない。
でも、クラスのみんなが気持ち悪いと、そう思うのであれば、空くんは。
彼も、俺のことを気持ち悪いと思うのだろうか。
やっとできた、友人なのに。
俺があの時、自分の気持ちに嘘をついてでも蓋をして、このまま明人の友人としていられたら、こんな惨めな気持ちには、ならなかったのだろうか。