ゼルトザーム屋敷の冒険【オリジナル】 (ページ6)

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第６話　身支度１ページ6

「あ、あのね……気になるのは分かるけれど、わ、私は怖くて……行きたくないというかなんというか……」
「そんじゃあ、エラだけお留守番だなあ？一人で、この家に」

　フリッツさんが悪い笑みを浮かべる。この家に一人ぼっちで待っている。う、うううー！！お屋敷に行きたくないけれど一人ぼっちも嫌だよーーー！！！怖い所を見に行くのも嫌だけれど、ままま、まだ一人ぼっちよりはマシかもしれない……！！

「お家でお留守番怖いんで一緒に行く」
「やったー！エラちゃん今日のお仕事はより頑張れるね！」

　ルー君が嬉しそうな笑みを浮かべる。フリッツさんもノリノリだ。まあ、私も怖いっちゃ怖いけれど気にならないと言ったら嘘になる……

　でもこの恨みは忘れない。次の朝ごはんの当番になったら味気ないトースト一枚だけにしてやる。

「そんじゃあー身支度も必要だし、今日は早めに仕事を切り上げるとするか！夜には出発しような」
「え、あ、ちょっと待ってよフリッツさん！？なな、なんで夜なのお！？」
「仕事の都合もあるし、なんせ森ん中の屋敷探索は夜にやった方が楽しいだろ？ロマンだよロマン」
「分かるよ店長、夜の方が盛り上がるよね！ロマンあるしさ！」

　ルー君、フリッツさん。私は二人の言う『ロマン』がよく分からない。いや分かりたくもない。私はロマンのない奴でいいから怖くない方をとりたかったです。

＊＊＊

　今日はお店を一時間早く閉めた。地平線に沈むお日様が地面をオレンジ色にする夕暮れ時、ガラガラガラとシャッターを下ろして店じまい。

　家に戻ってそれぞれ準備を進める。森の中に行くは行くけれど、お屋敷は外から見るだけ。ハイメンダール巡査の話がもしも"本当の話"だとすれば、未だに住民が住んでいるはず。面倒ごとには巻き込まれたくないってフリッツさんは言っていた。じゃあ行かなきゃ良いでしょうに、ロマンというやつは厄介だなあ。

　森の中にあるお屋敷を見に行くのに必要な道具ってなんだろう？スマホ、は必須だよね。あとはポケット充電器に、懐中電灯……飲み物も用意しておこう。冷たいお茶を水筒に入れて各自が持つ。見に行くだけだし、そんなに荷物は要らないよね……あ！いけない、日記帳を忘れるところだった。

　小さい時からずーっと書き続けて、もうすぐで終わりのページになる大切な宝物。どこか出かける時には日帰りか否か関係なく持って歩いているんだよね、もう習慣。