ゼルトザーム屋敷の冒険【オリジナル】

第１９話　脱出条件の考察２ ページ19

「多分、それはミスリードだよ。"正体を見抜く"っていう言葉に引っ張られがちだけれど『屋敷の住人の◯◯さんの正体は人間です』っていうのも、正体を見抜くっていう事になるから」
「基準を人間にして"この住人達は何者か"って考えるんじゃなくて、基準を謎の生命体にして"この住人達は何者か"って考えるっていう事だよね」
「そういう事」

　つまり、屋敷の住人達の正体を探る為には"人間ではない屋敷の住人の正体は何か"という考えを捨てて"謎の生命体である屋敷の住人の正体は何か"という考えにしなくちゃいけない。
「その人は間違いなく人間である」と言い当てるのも"正体を見抜く"って事になる。

　"人間じゃない何か"ではなくて"人間か人間じゃないか"という思考でいかなくちゃ。
　人間を選択肢から外しちゃいけない。この正体当てクイズは予想以上に難しいかもしれない。

「ここの人達の正体はまだ分からないけれど、これから始まる晩餐会が正体当てクイズ開始の合図なんだろうね。気を引き締めないと」

　鮮やかな紫色の瞳が輝いている。そういえばルー君って昔からこういう謎解き好きだったっけ。思い出に浸って思わず口元が緩んでいると

「御二人様、ダイニングに到着いたしました」

　ホルストさんが大きなドアを開ける。私とルー君は顔を見合わせた。

「さあ、脱出開始だね」
「望むところだよ」

　その第一歩をしっかりと踏み出すと同時に、心の中にあった恐怖を見ないように奥に押し込めた。

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