第16話 晩餐会の支度3 ページ16
「緊張しなくても良いのよ」
プラグをドレッサーのすぐ側にあるコンセントに挿しながらティアナさんは言った。
パチ、と軽い音と共にドライヤーの熱い風が冷えた髪と首に当たる。濡れた髪のせいで首元が冷えていたから、普段は熱く感じる風がなんだか心地良い。さっきのタオルに似た別のタオルで髪を優しく拭かれながらドライヤーを当てられる。
その風にのって、甘い香りがふんわりと舞った。これ、ティアナさんがつけている香水かな? ……甘くて、上品な香り。前にお店に来たお客さんがつけていたのと同じ香りがする。確か、フルール・ド・フルールという名前の香水だったよね。
また鏡越しに赤い瞳と目が合う。視線に気がついて慈しむような笑みを向けられた瞬間、鼓動が激しくなって、みるみる顔が熱くなっていく。どど、どうしよう、どんどん顔が赤くなっていく自分の顔が鏡に写されている。
だって、何故か分からないけれどむず痒い程に緊張しちゃって、恥ずかしくなって。凄く、嬉しくて。あーー! そう思えば思う程顔が赤くなっていくーーー!!
「さー、髪を梳かすわよ。痛くないようにするからね」
優しい声がかけられて、ハッと我に返る。ティアナさんは私を見るとフフッと楽しそうに笑って、ドライヤーを当てられながらスーッとブラシで髪を梳かしていった。先ほどの言葉通り、それほど痛くなく梳かされいく。
髪を丁寧に撫でる柔らかいタオル、ふんわりとした甘い香り。温かくて、気持ち良くて、優しくて。楽しそうな鼻歌を聞いている内に「よーし梳かし終わった!」という嬉しそうな声が聞こえた。
「さ、こっからヘアアレンジとかをしていくんだけれど……驚かせたいから目を閉じていてくれる?」
「え?あ、はい」
素直に目を閉じると、良い子ね〜と優しく言われる。カチャカチャと軽い音がしたかと思ったら、横の髪を手櫛で撫でられて細いピンで止められる。
ん、また緊張してきた……。そういえば『人間は入れる情報の80%を視覚に頼る』って何かで読んだ気がする。大人しく目を閉じているからその"80%"が遮断されている状態、何をされているか分からなくて変にドキドキするのも無理はない……かな?
なんか、今のティアナさんのように、楽しそうで相手を思いやる優しさをどこかで前に経験した気がする。あれは……どこだったっけ。あと少しで思い出すんだけれど……
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ルツ・ヒューイット(プロフ) - ぼうきれ/新藤緋色さん» なるほど、ありがとうございます! (2021年4月3日 18時) (レス) id: 8219e67f68 (このIDを非表示/違反報告)
ぼうきれ/新藤緋色(プロフ) - ルツ・ヒューイットさん» 確か、エラという名前には美しいという意味があったはずです。平凡な見た目でも芯の真っ直ぐな美しい子、というイメージで名付けました。 (2021年4月3日 18時) (レス) id: 5f459e3a39 (このIDを非表示/違反報告)
ルツ・ヒューイット(プロフ) - 主人公のエラちゃんのお名前って可愛いですよね。この名前にしようと思ったきっかけは何ですか? (2021年4月3日 18時) (レス) id: 8219e67f68 (このIDを非表示/違反報告)
ぼうきれ/新藤緋色(プロフ) - ルツ・ヒューイットさん» そこら辺もまだ語れません……今後に乞うご期待です! (2020年11月4日 10時) (レス) id: 9dfed805b5 (このIDを非表示/違反報告)
ルツ・ヒューイット(プロフ) - そういえば思った事ですが、幽霊や心霊現象も含まれますか? (2020年11月4日 7時) (レス) id: ac128bc03f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:新藤緋色 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/homepageofSHS/
作成日時:2020年3月29日 23時