ゼルトザーム屋敷の冒険【オリジナル】 (ページ12)

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第１２話　屋敷の住人は…… ページ12

「お待たせいたしました、お部屋の準備が調いました」

　ホルストさんが恭しくお辞儀をする。すぐ後にジークヴァルトさんもここにやって来る。

「ねえ、御当主、執事さん」

　不意にルー君が話しかけた。

「随分手慣れているみたいですよね、他にもお客さんとかいるんですか？」
「はは、鋭い子供だ」

　フフフと淡い笑い声をあげるジークヴァルトさん。その笑い声はとても無邪気なものだった。その言葉使いも、私達に初めて会った時の威厳のあるものとは違い、優しげだ。

「ここにはね、私とホルストの他に四人の住民が住んでいるんだ。でもその五人──いや、ホルストも含めた五人はね、元はここに迷い込んで泊まっていた"お客様"なんだよ。ここでの生活がたいそう気に入られて、ゼルトザームの屋敷の住民になったんだ」
「つまり、貴方の血縁関係者じゃない？」
「うん、その通り。お客様同士が血縁関係者だったりはするけれど、私とは縁もゆかりもない他人だよ」

　満足いただけたかな？というジークヴァルトさんの言葉にルー君は無言で頷く。昔から思っていたけれど、ルー君ってボーッとしている時もあるし、子供っぽいワガママな所もあるけれど、いつも妙に冷静なんだよね。
　自分の聞きたい事を聞いて、言いたい事を言う。だから遠慮なく尋ねるし、本心のままに話す。変わっているけれど、そんな所わりと好きなんだよね。お父さんに本心を偽られたまま話された身としては、潔い。

　それに、今の会話には凄く大事な情報があった。ここに住んでいる住人は、全員で六人。この六人の正体を見事に言い当てれば、私達は帰れる、という事。思っていたより少ない。大丈夫、きっと帰れる。大丈夫、落ち着いて。怖くない、怖くない。

＊＊＊

　部屋へと案内される道中、誰もが無言のままだった。静寂の圧に耐えきれず、気を紛らわせようと屋敷の中を見渡した。

　外見は古ぼけていたのに内装は絢爛豪華だった。光り輝くシャンデリアが天井から私達を眩しく照らして、真っ白な壁紙にはシミ一つない。新しい床にはフカフカのピンク色のカーペットが敷かれていて、本来ならミスマッチのはずなのに浮く事なく屋敷の景色に調和している。歩く度に、カーペットの柔らかさが靴越しに伝わってくる。

　こんな良いカーペットを雨で濡らしていいのかな。結局暖炉だけじゃ乾ききらなかったし、着替えも持ってきていないのにどうしようかな……