第9話 ゼルトザームからの手招き1 ページ9
ハイメンダール巡査の話を聞いたばかりの私へ。
ルー君とフリッツさんがどんな事を言っても、森に出かけようなんて事はしないでください。良いですか、どんなにロマンを語られ、少しばかり脅されても出かけないで。
数十分後の私より。
こうして過去の私に話しかけたい。話しかけて、今日の探検を中止にしたい。
今、何が起きているんだろう。起きる出来事の全てにインパクトがあって、頭が追い付かないんだけれど。ちょっと待って、状況の整理を──
えーと……私とルー君、フリッツさんの三人は屋敷を見に森の中へ行った。ここら辺にある"森"なんて一つしかねえだろ! ってフリッツさんが言ってたし、私達も同意見だったから近くの森の中を散策し始めた。
それで、道中でゼルトザーム屋敷の事をスマホで調べながら、それっぽい建物を探し回ったんだよね。幸い、道にも迷わなかったし。
そこから少し時間が経って、ネットの掲示板に書いてあった、古ぼけた緑色の煉瓦に雨晒しになったせいか少し脆そうな茶色の屋根という屋敷の見た目通りの建物が見つかって、それでルー君もフリッツさんも満足した。だから、もう家に帰れるはずだったのに。
ポツ、と鼻先に滴が落ちたかと思ったらあっという間にバケツをひっくり返したような酷い雨が襲ったんだよね。
まさか雨が降るなんて思ってなかったから、傘とか全然用意していなくて。それで、屋敷の玄関が屋根付きだったからその場所を借りて雨宿りを始めたの。濡れた髪とか服とかを絞っているうちに、雨が雪に変わったんだ。あれよあれよという間に吹雪になっていて。周りの景色が全て雪に変わったんだ。
濡れた体には、酷く堪えた。体温が下がっていくし、体力も次第に奪われていったの。
このままじゃきっと、死んじゃう。でも白が埋め尽くす森の中を歩いて家に帰れる自信はないし、そんな体力もない。
その時だった。
「そんな所に濡れた体でいては風邪をひいてしまいますよ。さあ中にお入りくださいませ」
穏やかな声が聞こえて、そちらの方を振り向いた。
後ろに撫でつけた灰色の髪、青緑色の瞳を持つ切れ長の目をした、50代くらいのおじさんが、白い蝶ネクタイを結んだ燕尾服に身を包んで立っている。もしかしてゼルトザームの住人──? いや待って。それよりこの人「中に入れ」って言った? でも、ここ……『一度迷ったら最後。屋敷の住人の正体を見抜かない限りお家に帰れやしねえ』って噂、あったよね。
そんな屋敷の中に入るの……?
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ルツ・ヒューイット(プロフ) - ぼうきれ/新藤緋色さん» なるほど、ありがとうございます! (2021年4月3日 18時) (レス) id: 8219e67f68 (このIDを非表示/違反報告)
ぼうきれ/新藤緋色(プロフ) - ルツ・ヒューイットさん» 確か、エラという名前には美しいという意味があったはずです。平凡な見た目でも芯の真っ直ぐな美しい子、というイメージで名付けました。 (2021年4月3日 18時) (レス) id: 5f459e3a39 (このIDを非表示/違反報告)
ルツ・ヒューイット(プロフ) - 主人公のエラちゃんのお名前って可愛いですよね。この名前にしようと思ったきっかけは何ですか? (2021年4月3日 18時) (レス) id: 8219e67f68 (このIDを非表示/違反報告)
ぼうきれ/新藤緋色(プロフ) - ルツ・ヒューイットさん» そこら辺もまだ語れません……今後に乞うご期待です! (2020年11月4日 10時) (レス) id: 9dfed805b5 (このIDを非表示/違反報告)
ルツ・ヒューイット(プロフ) - そういえば思った事ですが、幽霊や心霊現象も含まれますか? (2020年11月4日 7時) (レス) id: ac128bc03f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:新藤緋色 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/homepageofSHS/
作成日時:2020年3月29日 23時