きみの純心【赤葦京治】 (ページ6)

今日:4 hit、昨日:2 hit、合計:354 hit

. ページ6

.

コンコン…

部屋の窓が鳴る。

シャッ

とカーテンを開くと

Aが自分の部屋から長い棒で俺の家の窓を一生懸命に突いている姿。

思わず笑いながら窓を開けると

『まだ起きてた？』

赤「うん。風呂入って出てきたところ」

『私も。ねぇ、明日この服にしようと思うんだけど、どうかな？』

Aが広げたのは

俺も知らないワンピース。

花柄のAによく似合いそうなふんわりした…

赤「新しく買ったの？いいね」

木兎さんと映画を見るために…

『そう。久しぶりに街に出るから』

赤「似合いそうだね」

『ほんと？お店の店員さんも似合うって言ってくれた』

店員は絶対そう言うんだけどね。

まぁでも、相当似合ってると思うから、本音かな。

赤「木兎さんにも褒めて貰えるといいね」

『うん。でも、明日1番に褒めてもらいたいのは京治から』

赤「今見せてくれたのに？」

『着た姿〜』

赤「想像できてるよ」

『分かってないな〜。絶対京治が思ってるよりも似合うように頑張ろっと』

赤「どうやって？」

『内緒。ねぇ、京治は何着る？』

赤「俺はいつも通りだよ」

『じゃあ明日1番にかっこいいって言う』

赤「だから、いつも通りだってば」

いつも言ってくれるんだから

そこには何も特別感はないのに。

『ねぇ京治』

赤「まだ何かあるの」

『トス見たい』

赤「何をまた訳のわからないことを」

『京治、さっきまでベッドに寝転がってボール触ってたでしょ』

赤「エスパーごっこ？」

『乱れたベッドとベッドの上のボール』

赤「………」

『どんな感じでやってたか見せて』

赤「はぁ……」

仕方ないからベッドに寝転がり、ボールを真上にあげるトス練をすると

それを黙って見ているようだ。

何回かして、ボールをキャッチしてAを見ると

小さく拍手が送られた。

赤「こんなの見たかったんだ」

『………うん。ありがと』

赤「変なの。まぁいつもだけど」

『うん。じゃあ京治、おやすみ』

赤「はいはい、おやすみ」

窓を閉めて、カーテンも閉めるA。

しばらく俺は窓を開けたまま眺めて

電気が消されたから

俺も静かに窓を閉めてカーテンも閉めた。

心臓に手を当てると

少しだけ速い鼓動…

気のせいだと思いたい。

電気を消して、ベッドに入り、目を閉じる。

全国への切符を手にした時のAの顔…

くしゃくしゃにしながら泣いてた…

…守りたいな。その純粋な感情。