2.純恋文書（赤）

【 Last 】 ページ21

.









パタリ、と小説を閉じた瞬間、ただならぬ幸福感に襲われた。



気になる部分がある、濁された部分がある、でも現実世界もそんなもので、気になる部分があってもそれを聞き出せなきゃ気になるまま。


濁された部分だって、その人がその物事を濁した理由があるからそれに気付けなきゃ知らないまま。





そこが気に掛かった私は、私なりの答えを見つけ出さなければいけない。





彼女は最後に、これが私の恋愛小説の一ページ目だ。と言っていた。





確かに、交際がゴールなんじゃない。交際から始まるという捉え方もある。言わば、第二章の始まり。


彼女の第二章が良いものか、悪いものか、読んでいる側の私の解釈次第でどうにでも出来るけど、この小説は誰目線で読むか次第で、不幸か幸せかが決まってしまう。






.








なぜ、彼女の友人は彼女に「おすすめの恋愛小説」を聞いたんだろう。


なぜ、彼女が通う図書館の仲良いスタッフさんは現実の恋に乗り気じゃなかったんだろう。


なぜ、彼女の偽装彼氏を務めた彼はそんな役を選んだんだろう。これには必ず、女除け以外に理由があった。本当に女除けしたかったんなら、夏休み直前にそんなことしないはず。




思うことは色々あった。




でも結局、恋愛は当事者たちの問題だから、あの二人が幸せを感じられているなら読み手の私だって幸せだ。だから、閉じた後に幸福感に襲われた。




紆余曲折はどの恋愛にもある。彼女たちは上手くいったけれども、上手くいかない場合だってある。

初恋は叶わない、と風の噂で聞いたことあるから、特にこの場合の恋愛は叶いにくかったんだろうな。





この小説のあれこれは私の妄想で成立させよう。





みんながみんな幸せになる恋愛がないなら、みんながみんな不幸になる恋愛もない。



曖昧な部分が残るかもしれないけれど、いずれみんな幸せになってくれるだろう。






私も、そんな恋愛がしたいなあ。









.








『おーい！はよ学校行くぞーー！』


「ああ、遅くなった！ごめん！聞いて、今やっとずっと読んでた小説読み終えて……」





『また恋愛小説か？飽きひんなあ』


「純恋文書っていう小説なんだけど、」









私も私の、恋愛小説を綴りたい。









.

あとがき→←【 p.70 】

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す