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やけに焦った様子で重岡くんがこちらにやって来た…のに、なかなか首の後ろの手を離そうともしない流星くんに
「ねえ!」という視線を送ってみたものの、無反応。
やばい、これは勘違いされる!
急いで離れようとした私がいとも簡単に流星くんから離れ、あれ?なんで?と思っていたら。
甘くて、でも少し大人っぽい流星くんの香りとは違う、爽やかで少しだけ甘みを帯びた香りに包まれた。
この香りの正体が、重岡くんと判断するまでかなり時間がかかったと思う。
『貰ってっていいよな?』
私を抱き締めたまま、流星くんにまっすぐ問い掛けた重岡くんの声が至近距離で聞こえてきて、それも私の心臓の動きを早くする材料になる。
次に流星くんが発した声は、どこか煽っているような。何かを企んで余裕を持った様子だった。
流星「俺の彼女なんやけど」
『はあ?偽装とかなんとか訳分からんこと言うとったやろ、仮なら俺が!……とにかく、仮は解消』
流星「やって、A。もう頑張れそう?」
流星くんが私に問い掛けた瞬間、私を抱き締める重岡くんの力がぎゅうっと強くなった気がする。
素肌!重岡くんのパーカーを借りちゃった私が悪いけど、重岡くん素肌!私をキュン死させる気なのかな?!
身動き取れないし、もう全身が熱くてなにをどう考えればいいのか、思考停止させられるくらいの刺激に耐えながら頷いた。
多分、流星くんがあの顔の近さまで持っていったのは何かの作戦だったんだろうな。
あとでお礼しなきゃ。
『頑張れるって。じゃ、また後でな』
流星「そのまんま攫ってくなよ?」
『考えとくわ』
ふわりと体が離れ、解放されたと思いきや今度は手をぎゅっと握られる。
………これは、世に言う恋人繋ぎ?
待って待って待って、訳分かんないよ重岡くん!良いの?好きじゃない女の子相手に恋人繋ぎとか、ハグとか、しちゃって良いの?
いや絶対ダメだよ!あんなの真希が見たら勘違いしちゃうし、重岡くんへのメリットがなに一つない!
っていうか、どこ行くの?!
『……えっ、顔赤すぎひん?熱?待って、ほんまに体調大丈夫なん?』
暫く歩いて、さっきと同じぐらい人気のないところに辿り着くと、振り向いた重岡くんが私を見てそう言うから、
「いや、これは……重岡くんのせい、ですね……」
精一杯言葉を紡いだ。
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なつみ(プロフ) - 楽しみに待っておりました。更新とても嬉しかったです。ありがとうございました。 (2020年4月7日 20時) (レス) id: d3080f9a44 (このIDを非表示/違反報告)
つき(プロフ) - なつみさん» 大変長らくお待たせ致しました…。果たしてまだ読んで頂けているのか、定かではないですけれども、いっときでも待ち侘びいて頂けて光栄です。返信も遅くなってごめんなさい。流星くん目線で何か書けたらなあ、と思っていたので、検討させて頂きます! (2020年4月6日 19時) (レス) id: 6a9dbedc74 (このIDを非表示/違反報告)
つき(プロフ) - まおさん» 返信遅くなってしまい、ほんっっとうにごめんなさい。キュンキュンしたと言ってもらえて嬉しいです。そう言ってもらえた私が嬉しすぎてしにそうです(笑)本当にありがとうございます。 (2020年4月6日 19時) (レス) id: 6a9dbedc74 (このIDを非表示/違反報告)
なつみ(プロフ) - 更新首を長くして待ってました。流星くんバージョンも是非書いて頂きたいです。続編宜しくお願い致します。 (2019年10月21日 23時) (レス) id: b3e8ac68c7 (このIDを非表示/違反報告)
まお(プロフ) - もうキュンキュンして死にそうです (2019年10月3日 6時) (レス) id: 082e554ec7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:つき | 作成日時:2019年9月15日 22時