純恋文書（赤） (ページ9)

今日:10 hit、昨日:5 hit、合計:108,577 hit

【 p.9 】ページ9

.

結局、ガッツリ聞いてしまった。

………ごめん、重岡くん。しかも重岡くんも絶対気付いてるよね、その複雑な表情的には絶対「こいつ完全に聞いたな」。

だから、思わず「ごめん！」と勢いよく謝った。

『え？あ、なんで？俺の方こそ一緒におんのに電話出てもうてごめんな』

「いや！だって、話、ガッツリ聞いちゃったし、…」

『聞かれたくない話やったら席外してるけど？(笑)』

え、あ、そうなの？

思わず素っ頓狂な声が出て、それに重岡くんがゲラゲラ笑う。

こっちは本気で聞いちゃいけないものを耳に入れてしまった！って焦ってたのに、なんであんな涼しい顔してんのよ！

ていうか、会話の内容的にあれは彼女さん……よね？

『こんな近くおんのに会話聞こえない方がむずいやろ』

「そ、そうだけど！」

『どした？落ち着きないけど』

「どうしたって……！か、かの、…いやなんでもないです！大丈夫！」

いきなり彼女の有無なんて聞いちゃ失礼よね。

うん、失礼だよ。よくぞ踏み止まったぞ、私。

自分を大いに褒めながら言葉と一緒にまたミルクティーを流し込むと、重岡くんは再び笑い出した。

『かの、まで言われたら察しつくわ(笑)』

「え、あ、ごめん！いや、ごめん！忘れて！」

『なんでやねん、そんな隠すような話でもないのに』

この前の話では、重岡くんの好きな人は高校で彼氏ができてしまったという話で止まった。だから、さっきの電話の相手が好きな人なのかも？と一瞬は予想した。

けど、好きな人が彼女ならブランコであんな哀愁漂わせないはずだ。

てことは、………誰？

『同じ大学の子なんやけど、まあ…今の彼女。告白してくれたから付き合ってん』

「す、好きなの？」

『いや。……でも、彼女おらんかったらアイツが怪しむし。アイツの彼氏も俺のこと怪しむから』

アイツ、というのはきっと重岡くんの好きな人。

確かに、自分の彼女が他の男と仲睦まじくしてたら彼氏側は気に入らないよね。そら、彼女持ちの方が安心できるだろうし。

……そっか、そこまでして重岡くんは好きな人を想い続けてるんだ。

…………って、違くない？

.