純恋文書（赤） (ページ41)

今日:5 hit、昨日:13 hit、合計:108,585 hit

【 p.41 】ページ41

.

真希「Aちゃん？！一体どういう…」

流星「A、帰ろ」

右に藤井さん、左に真希。

講義が終わってすぐ、噂を聞きつけたであろう真希が講義室に駆けつけてきてくれて、私への尋問が始まった。

が、隣の藤井さんはケロッとした様子で一緒に帰る気満々。

ここは一度、藤井さんに先に帰ってもらって……いや待てよ？私はまだ事の詳細を聞いてない！聞かなきゃいけない！

流星「君はー…Aの友達？」

真希「えっ？はい。……藤井くんは？Aちゃんの彼氏、なの？」

流星「あ、もうそんな広まってんねや」

女の子の情報綱って怖いな？なんて私に話し掛けて笑った藤井さんは次の瞬間、ぎゅっと私の肩を抱き寄せた。

きゃあ…！という女の子の悲鳴と声にならない私のヒィ……！という胸中の悲鳴が重なった。

流星「これからもAと仲良くしたってな。今日はデートやから話はまた今度。んじゃ」

「うええええ？真希？真希？明日ね！明日ちゃんと話そう！」

私の肩を抱き寄せて完全に彼氏になりきった藤井さんは真希に綺麗な笑顔を見せてから私の手を引っ張って歩いていく。

そんな光景を呆然として見る真希の気持ち、私にはよく分かる。だって私も今なにが起きてるか何も分からないから、呆然としてる。

そして、引っ張られていた手が恋人繋ぎへと変化した時。

『片岡？』

「…っ！重岡くん！」

久々に目が合った。ちゃんと目を見れた。

初めて大学内で会えた喜びと、本当に同じ大学だったんだっていう嬉しさが込み上げてきてピタリと足が止まった。

そして、必然的に藤井さんの足も止まって私の方を振り返る。

『……誰なん？そいつ』

一回も聞いたことない重岡くんの低い声になぜかヒヤッと背筋が凍った。

重岡くんにはしっかり私の口からこの状況を弁解しなきゃ。

「この人は今日…！」

流星「今日からAの彼氏になった藤井流星」

じゃあ、俺ら急いでるから。

それだけ吐き捨てて再び歩き出した藤井さんに再び引っ張られ、えっ？！ねえ！という短い言葉しか私は連発する事が出来なかった。

男の子の力に抗えるほど力強くないことが悔しい。重岡くんの元に戻る事も出来ず、後ろを振り返ると

重岡くんは俯いていた。そして手をぎゅっと握り締めている。……そりゃこんなありえない光景見たら、そうなるよね。

ああ、早く弁解したい。

.