純恋文書（赤） (ページ39)

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『俺のこと送ったらおまえの帰りが心配やから』

「えっ、ああ！えっと、……ありがとうございます」

『んじゃ、また。ちゃんと鍵閉めときや？』

「は、はい！」

スマホを片手に重岡くんを玄関まで見送る。

最後までろくに目は見れやしなかったけど、声色がすごく優しかったから…多分大丈夫だ。

不審に思われてない。そこについて怒ってない。

重岡くんの後ろ姿を見送り、扉を閉めると「おーい！おーいおーいおーーーい！」と微かに声が聞こえて、慌てて繋がったままの電話の存在に気付いた。

「あああ、すみません小瀧さ…」

望「いやいやいや！え？！なに？！しげと一緒やったん？！」

「あっ、一応さっきまで…」

望「うっわ、ごめん。めっちゃ邪魔した」

「いえいえいえ、大丈夫です！…ていうか、藤井さんに任せたとは？」

望「え？ああ、言葉のまんま！あとは流星がどうにかしてくれるから仲良うしたってなー。んじゃまた！」

ちょっと！と待ったを入れる私の声は小瀧さんに届かず、私に届いたのは電話が切れた音。

一体、何を目論んでいるのだろうか。

私に男の影をチラつかせたって、それになんの効果があるのか。

…………ていうか！重岡くん！重岡くんがさっき、私になにか言いかけようとしてた！

「あぁ～～……人生イチやらかした………」

これでもかってくらい凹んでいると、私と連絡先の交換なんてしてないはずの小瀧さんからメッセージが届いた。

「あ、菜月さんから…」

無理言って菜月から聞き出した！てか、勝手にスマホいじって追加した！よろしく！

そんなメッセージと共に可愛いスタンプが添えられていた。

よろしくお願いします。と淡白な文章を返して、床に寝っ転がった。

脳にこびり付いて離れない重岡くんの言動。

どうしよう、と呟いた重岡くんの言葉は決して私に掛けたものじゃなくて、独り言だった気がする。

ああ、頑張って重岡くんの表情をしっかり見ていればよかった。そしたら重岡くんが悩んでいるのか、落ち込んでいるのか、汲み取れたはずなのに……。

今更悔やんでもしょうがないよね。

そう言い聞かせて、冷蔵庫の中のミルクティーを一口飲む。

自分の重岡くんに対する感情ごと全て飲み込んで、もう出てこないようにする事が可能なら良いのにな。

……って、私は一体なに言ってんだか。

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