七夕 ページ1
「Aちゃんはなんて書いた？」
「…はい？」
突然、最年少から雑な質問を受け少しの間が空き、出てきた言葉は眉間にシワがよってしまった顔付きだ。
「七夕の願い事！」
「あー、、ね。」
「なんて書いた？」
あー、そっか、今日か。天の川は。“めんどくさい”その気持ちを察しられないように欠伸で誤魔化す。
ここで思い返す。去年はこんなにも食いついただろうか。
確か去年は話題にも出なかった筈だ。
「ねー、なんて書いたの？」
反応しなくなった紅一点にもう一押しの声。その声に面倒臭がり屋が答える。
「足が速くなりますよーに」
「嘘だ」
「え、今日ってエイプリルフールだっけ」
「違う、と思う。」
「じゃあほんとじゃん」
考えなくても口から出てくる。それが嘘だとバレていても紅一点には関係なし。何も考えずにマシンガントークのような会話をただ楽しんでいる
「意味わかんないんだけど」
「しょーりぃ、わかるだろ？足が速くなりたいんだよ」
暫し口を出さずに聞いていたこのグループのセンターに突っ込まれる。傍から見たらどの会話も成立していない。その事が分かっていないのは紅一点だけだ。
「ねーえー本当のこと言ってよ」
「言うと叶わないんだよ？」
「…知ってる？言った方が叶うらしいよ？」
「あー、それ俺も聞いたことある。」
「ふまけんんん、、、」
今まで聞いているのかいないのか興味なさそうにして会話に入ってこなかった年上組がタッグを組む。
大学卒の年上組に言われれば年下組は信じるに決まっている。そう思うのは紅一点も二人に騙されたうちの一人だから。
「言えばいいじゃん。」
「言えば終わるよ？」
二組のシンメの言葉に押され、周りを見ると待っている、と感じたのか逃げられない、と感じたのか深呼吸をし、意を決し、口を開く。
「……便秘を直したい。」
数秒の間があった後、聞こえてきたのは笑い声と便秘？と言う声。
「便秘？」
「そー、便。悩まされてるんだよ。」
ほれ、と言いケータイの画面を見せる。見ると桃色の短冊に大きくもなく小さくもない字で願い事が。
治るといいね。
それが七夕の願いを書いて言われたことだった。そう語る紅一点
どこかにあるかもしれない、紅一点が書いた願い事をのせた短冊が。
きっと、どこかに。
『快便になりますように！』
続く
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作者名：魚のほっけ | 作成日時：2019年7月13日 0時
