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しばらくすると"東都水族館"と書かれた場所にたどり着いた。
「水族館?」
「あぁ、上司から無料のチケットをもらったんだが行く相手がいなくてな。水族館は嫌いか?」
「ううん。水族館なんて久々で、驚いただけ」
「そうなのか。なら、早く行こう」
と、さり気なく手を差し出してくる彼の手を握り
私達は館内へと入った。
水族館に来たのは、まだ両親が生きている頃ぶりだ。
中にはたくさんの生き物がいたが、中でもカラフルなたくさんの魚がいたり、ウミガメやサメが悠々と泳いでいる大水槽の前で足が止まる。
「久々の水族館はどうだ?」
「すごい楽しい!連れてきてくれてありがとう」
「ミモザ」
「ん?」
「君の名前を教えてくれないか?」
「七瀬希子だよ」
「そうじゃない。本当の名前を教えてほしい。」
彼のまっすぐな目が私を捉える。
私は気がついたら口を開いていた
「A。私の名前だよ。...あなたは?」
「A...、教えてくれてありがとう。俺は...ヒロミツ。景色の景に光で景光。」
「景光...さん?」
「今更さんなんかいらないさ。そのまま呼んでくれ」
「景光か、ふふっなんか今更コードネーム以外で呼ぶの変な感じ。けど、私も組織に入ってなかったら今頃大学なんかに行ってこうやってお互いのことを名前で呼び合う友達や恋人が出来てたのかな...」
「今からでも遅くない、まだいくらでもやり直せるさ」
「...そうかな」
私はもう一度水槽を見上げる。
広い海で泳ぎたいのに泳げないでいる水槽の魚達が、組織を出たいと思うのに簡単に出られないでいる自分と重なった。
「A、そろそろ行こう」
「うん」
私達はお互い言わずとも、手を繋いで歩き出した。
水族館をでて、しばらく海沿いの道を歩く
少し冷たい海風が熱くなった頬を冷やして心地よかった
「この辺は人がいないのね」
「そうだな。...A」
「なに?」
「もし君を組織から...いや、やっぱなんでもない」
「えーなに?そこまで言ったんだから言って?」
私は足を止め、彼の方に向き合う。
彼の目をしっかりと見て、言葉を待つ
「...君を組織から抜けさせられたら、その後...俺のところに、来てくれませんか」
その言葉に驚く。自分よりも何個も上なのに顔を赤くして真剣に伝えてくれる姿に思わず笑ってしまう
「ふふふ顔真っ赤、それはプロポーズ?」
「いや、ちがっ!そこまでは急に行かないから...、ただ俺の傍にきてほしい」
彼はそう言うとそっと抱きしめた
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iwa(プロフ) - お話惹かれてます。でも、あー救済じゃないのが切ないです。読みふけってますが救済ルートもほしい。 (2019年11月28日 16時) (レス) id: d46b647962 (このIDを非表示/違反報告)
砂糖菓子 - お話大好きです!!好きすぎて夜中まで起きてずっと読んでました!忙しいとは思いますが、お話の続き楽しみに待っています〜! (2019年1月5日 11時) (レス) id: 895cf97eb9 (このIDを非表示/違反報告)
rrrr(プロフ) - 早く続きが見たいです! (2018年9月4日 19時) (レス) id: 4886ac9ef5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アプリコット | 作成日時:2018年8月3日 10時