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「飲みたいものをお伺いするのを忘れてしまったもので…水、コーヒー、お茶、ジュース、炭酸系、そして缶にペットボトル、紙パックまで、病院中の自動販売機を回り、揃えてきました!」
額に汗を浮かべ、素敵な笑顔でこちらに言ってくる彼はきっとすごくいい人なんだろう。
ただ、少し残念な人なんだろう。
「わざわざ、ありがとうございます。えーと…とりあえず、お水だけもらいますね?」
どうぞ!と渡されたものを受け取り、少しだけ体を起こして水を含む。
何日間寝ていたのか分からないが、自分の喉の乾きは相当なものだったらしく、あっという間にペットボトルの半分を飲んでしまった。
「ふー、おいしい…。あの、良かったらお茶も貰っていいですか?まだ立ち上がることが大変なので、病室に飲み物欲しくて…聞こえてます?」
風見さんは目は合っているが、なぜかぼーっとして話を聞いていないようだった
「あ…はっ!すみません!あ、えーと、飲み物ですよね!冷蔵庫に入れておきます!」
そういう彼はせかせかと机の飲み物を部屋の隅に置かれたミニ冷蔵庫に入れてくれた。
「色々とありがとうございます…、その袋に入っているのも私の着替えとかですよね」
と、部屋の隅に置かれた袋を指さす
「いえいえ。私は降谷さんに頼まれたものを持ってきているだけですから。お礼は降谷さんに言ってください。あなたがここに運ばれた時から、降谷さん仕事の合間にずっとここに来ていたんです。けど、あの人があなたを放って置かないわけが分かりました」
風見さんはニコッと笑うと
「それでは仕事に戻りますね。何か必要なものとかあれば降谷さんに言ってくだされば持ってきます。それではお大事に」
と、病室から出ていった。
「真面目そうな人かなと思ったけど、いい人ね…。」
それより降谷さんが来てくれていたんだ…じゃぁ目覚める前に聞こえた声は
「風見は帰ったようだな。」
その声にドキッとし、顔を向ける。
「えぇ…さっき帰られたわ。飲み物もたくさん買ってきてくれたし、風見さんいい人ね」
「まぁ少し抜けているところがあるがな。なんだこの大量の飲み物は…飲み切れるのか…?」
冷蔵庫を開くと、彼は眉間にシワをよせた
「多分無理だと思う…折角だけど、よかったら何本か持って行ってほしい」
「分かった。遠慮なくもらうよ」
彼はそういい、コーヒーの缶を手に取る。
先程まで明るかった病室内も、窓から夕日が差し込みオレンジ色に染まる
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iwa(プロフ) - お話惹かれてます。でも、あー救済じゃないのが切ないです。読みふけってますが救済ルートもほしい。 (2019年11月28日 16時) (レス) id: d46b647962 (このIDを非表示/違反報告)
砂糖菓子 - お話大好きです!!好きすぎて夜中まで起きてずっと読んでました!忙しいとは思いますが、お話の続き楽しみに待っています〜! (2019年1月5日 11時) (レス) id: 895cf97eb9 (このIDを非表示/違反報告)
rrrr(プロフ) - 早く続きが見たいです! (2018年9月4日 19時) (レス) id: 4886ac9ef5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アプリコット | 作成日時:2018年8月3日 10時