73 ページ24
流石に数ヶ月も働き詰めになっていた私に、ベルモットやバーボンは何度も静止の言葉を言ったが、全く耳に入らなかった。
そして私は遂に任務中倒れ、大ケガを負った。
どれだけ手を合わせていただろうか、顔を上げると、目の前にハンカチが差し出された。
「どうぞ」
自分でも気付かぬ間に泣いていたらしく、私はそのハンカチで涙を拭いた。
「ありがとう...」
「...Aさんにとって、兄はどんな人だったんですか?」
「とても大切な人よ。影にいた私に光を与えてくれた人」
「兄の恋人だったんですか?」
彼女の顔を見て首をふる。
「そうなれたら良かったんだけどね...あ、この花の名前知ってる?」
私は、お供えで持ってきたお花を指さした。
突然話を切り替えたことで、彼女は疑問の顔を浮かべたが、すぐに答えてくれた。
「えーと、たしか"ミモザ"でしたっけ?」
「正解!よく知ってるね。」
「一時期花言葉にハマっていたことがあるんです」
「そうなのね、じゃぁミモザの花言葉は?」
「優雅とか友情とかでしたっけ?けど、黄色のミモザには別の花言葉があったような...」
「"秘密の恋"」
「秘密の恋?」
私は光希ちゃんに向け微笑むと、彼女のワイシャツのポケットに1枚の紙を入れた。
「これは?」
「私がいなくなった後に見て頂戴。きっと、懐かしいと思うはずよ。じゃぁね」
と告げ、私は足早にその場を立ち去った。
そして、角を曲がるとお墓の陰に隠れた。
暫くすると、彼女が追いかけてくる足音が聞こえたが、私は気づかれないよう身を潜め、彼女が立ち去るのを待った。
光希ちゃんに渡したものは、景光の部屋で見つけた、彼と幼い彼女が写る写真を渡したのだ。
「会えてよかった」
私は彼女が戻ってくる前に、お供えしたものを全て回収し、自分が来た痕跡を消した。
そして、隠していたバイクに跨り、その場を急いで離れた。
バイクを走らせていると、携帯が鳴り、道路脇に止めて電話に出る
「おめぇ、どこにいる」
ジンか...
「内緒」
「もう傷は治ったんだろ。ベルモットからそう聞いている」
「えぇお陰様で。だけどもう少し休養を頂戴?少し自由になりたいの」
「...チッ、勝手にしろ。そのかわり復帰した際にはたっぷり仕事をくれてやるからな」
ジンはそう言い、電話が切れた。
「この半年、1度もかけてこなかったくせに。何よ突然」
携帯をしまい、私は再びバイクを走らせた。
318人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
iwa(プロフ) - お話惹かれてます。でも、あー救済じゃないのが切ないです。読みふけってますが救済ルートもほしい。 (2019年11月28日 16時) (レス) id: d46b647962 (このIDを非表示/違反報告)
砂糖菓子 - お話大好きです!!好きすぎて夜中まで起きてずっと読んでました!忙しいとは思いますが、お話の続き楽しみに待っています〜! (2019年1月5日 11時) (レス) id: 895cf97eb9 (このIDを非表示/違反報告)
rrrr(プロフ) - 早く続きが見たいです! (2018年9月4日 19時) (レス) id: 4886ac9ef5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:アプリコット | 作成日時:2018年8月3日 10時