あいくるしいということ。３

回想 10 ページ40

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「わかった。」


「あと、この事は誰にも言わないでね？」


自分１人で背負うって魂胆か。
もう、笑いすらこみ上げてくる。

…強いんだ。この人は。本当に



「…どうかな？」

「あー！言ったらスンチョルとジョンハン言うからね〜？ジフンがこの子の父親でーす！って！」

「…他人に言いふらされるよりはマシ」



エリの屈託ない笑顔が忘れられない。

まださほど膨らみも目立たない腹を撫でながら
言っていた言葉、、なんだったかな？




あの日以来、エリに会うことは無かったし
家族の状況も俺の状況も、何も変化がなかった。


変わった事といえば、俺の気持ちだろうか？


子供の事、ユナの事、就職の事、
全てが肯定的になったようだ。

挫けそうになれば不思議と
あのエリの瞳を思い浮かべた。



…エリのことが気がかりじゃないといえば嘘になる。
後ろめたさもあった。



死にものぐるいで働いて、
たじろいでいるうちに子供が産まれた。





そして、エリが死 んだ。






この話を知ったのは亡くなってからもう４年も経ってからの事で、風の噂で聞いた話だった。


エリの子供の事が気がかりだった。
もしかしたらエリと一緒に…とも考えて
なんとか噂を辿って調べていくと、事実かわかる。


エリの子供は無事で、
スンチョルが引き取り育ていると。


スンチョルとジョンハンとは
後ろめたさもあって随分と会っていなかったし
とっくに連絡先もわからないし住んでいる場所もわからない。

もしかしたらエリの命日に墓へ行けば会えると思ったけど…
会えることはなかった。

日に日にエリの子供を一目見たいと思い初める。
同時に罪悪感が蘇り、増していく。


毎日、エリの墓に通うことで許しを乞う。
寒くなれば毎年心臓が軋むように痛い。




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