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「 ...え？ 」
" 期待に応えられない "
そう言った手越くんは私がいつもテレビで見てる
明るい笑顔じゃなくて、今にも泣き出しそうで。
「 …なんてね。冗談だよ！頑張るね！ 」
誰だって分かるよ。
全然上手く笑えてないです、手越くん。
「 手越くんっ... 」
「 楽しいイベントにするからね！ 」
どうしても無理に笑おうとする彼の袖を引っ張った。
私は知らない。芸能界のことなんて。
きっと想像してるよりずっと大変で、
私達が見てるのはほんの一部にすぎない。
手越くんはそんな世界に生きてる。
「 無理しないで下さい… 」
「…無理なんて、してないよ？ 」
「 手越くんが苦しそうなの...見たくないです... 」
「…はは、ごめんね。ちょっと疲れちゃってさ 」
手越くんは静かに笑ってから壁に寄りかかって
しゃがんだ。
「 もう、どうでも良くなっちゃった。
何処か遠くへ行きたいんだ。誰もいない所へ」
手越くんが出掛けるだけには大きすぎるリュックを背負っているのは、何処かへ行くためだったんだ。
手越くんは遠くをじっと見つめて、ため息を漏らした。
「 もう、どうにでもなればいいのに。 」
私には何も出来ないのかな...
空を見上げると丁度雲の合間に月が見えた。
今夜の月は綺麗だな。
「 逃げる… 」
何も出来ないけど、
少しでも何か出来るなら。
「 手越くん、また自分勝手な事していいですか？ 」
「…？ 」
どうでもいいなら、
疲れてしまったなら、
遠くへ行きたいなら、
私は手越くんの瞳を真っ直ぐに見つめて
手を差し伸べた。
「 一緒に逃げよう___ 」
続く (更新停止中)
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作者名：こと | 作成日時：2018年6月30日 23時
