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「そんなこと言うなら、Aちゃん、この簪にそっくりよ!」
と言って私の前に突き出されたのは、大きく青い梅を模した飾りが付けられた、青色の簪だった。
とても派手で、豪華で、地味で質素な私とは正反対の簪だった。
「私とは正反対だよ...。」
「そんなことないわ!」
私の右耳上にそれをかざした蜜璃ちゃんは、自信満々な笑顔で笑った。
「とっても似合ってるわ!素敵!」
「ありがとう」
自然に笑みがこぼれた。
私も蜜璃ちゃんから貸してもらった桜の簪を、蜜璃ちゃんの右耳上にかざした。
綺麗な桜が、蜜璃ちゃんの桜色の髪によく馴染んでいる。
私達はふふっと笑いあった。
すると蜜璃ちゃんは、あっ、と小さく零し、キラキラとした目で私を見つめた。
「交換するのはどう!?」
「交換...?」
突然出てきたキーワード「交換」に私が首を捻ると、蜜璃ちゃんはうん、と頷いた。
「梅の簪を私がつけて、桜の簪をAちゃんがつけるの!Aちゃんと一緒にいてる気分になれて、すっごく素敵だと思うの!」
蜜璃ちゃんは、どう?とわたしと距離を縮めた。
名案だ。
「いいと思うよ」
「やったー!」
私がそう笑って頷くと、蜜璃ちゃんは店主の女性にこれ下さい、と簪を渡した。
私はそれを手で制止した。
だって、
「さっき食べさせてもらったのに、簪も買ってもらうなんて悪いよ。」
んだもん。
それを聞いた蜜璃ちゃんは、くすっと笑い、私を抱き締めた。
もう、店主さんの前なのに!
「優しいのね、Aちゃん。でも、これは私が勝手にやってる事だから気にしないで」
私を抱きしめる力を強くしながら、私の肩に顔を埋めて言った。
「でもっ、」
「いいの。遠慮しないで!」
蜜璃ちゃんは、首から提げていた桃色の巾着からお金を取りだし、店主さんに渡す。
悪いよ、と言いかけたがやめて、ありがとう、とだけ言っておいた。
行き過ぎた遠慮は失礼って言うしね。
お会計が終わった蜜璃ちゃんは、また私と腕を組み、夕日が沈む西の方角に歩き始めた。
「ありがとう」
「気にしないで」
少し会話を交わす。
巾着から簪を取りだした蜜璃ちゃんは、私の適当に結った編み込みに簪を差し込み、
「うん、すっごく似合っているわ、Aちゃん」
と、幸せそうに笑った。
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千華(プロフ) - 鴉玄さん» 私も書きやすいお話でした〜!!あと1話、2話で書き終わりますのでしばしお待ちを!他にも読みたいお話があればリクエストして下さいね〜! (2020年3月21日 8時) (レス) id: c4f4aba572 (このIDを非表示/違反報告)
鴉玄(プロフ) - 久々に読んでいて相変わらず尊すぎる…何気にリクエストした惚気嫉妬話が書かれている…だと!?ありがとうございます(語彙力) (2020年3月21日 3時) (レス) id: 436aae3705 (このIDを非表示/違反報告)
千華(プロフ) - すぴねるさん» ありがとうございます.......!! (2020年3月20日 22時) (レス) id: c4f4aba572 (このIDを非表示/違反報告)
すぴねる(プロフ) - もちろんです!この作品のために描いたものですので! (2020年3月20日 18時) (レス) id: ca174faec5 (このIDを非表示/違反報告)
千華(プロフ) - すぴねるさん» いえいえ、ありがとうございます!!本当に素敵なイメ画ですね...!!このお話の方で、イメ画が掲載されているお話を紹介させていただいてもよろしいでしょうか? (2020年3月20日 18時) (レス) id: c4f4aba572 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リサ | 作成日時:2019年10月20日 21時