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お茶を口に含もうとしていた炭治郎くんは、ぶっとお茶を吹き出した。
「っ、すみません」
『気にしないで』
と、私は机の上に撒き散らされた炭治郎くんの口から出たお茶を、着ていた羽織の裾で拭いた。
それを見た炭治郎くんは、目を見開き、私の腕を掴んだ。
「そんな所で拭いたら濡れますよ!?」
『...うん、それが?』
慌てて羽織の内側から手ぬぐいを取り出す炭治郎くん。
どうしてそんなに慌てているの?羽織が濡れたら、どうしていけないの?
私がぼーっと炭治郎くんが掃除をしているところを見つめていると、炭治郎くんは拭き終わったのか、羽織を脱ぎ、腕に抱えたまま私の方を見すえた。
「あの、感情がない、とは?」
真剣な瞳と声音でそう問いかけてきた炭治郎くん。
そのまんまだよ、そのまんま。
『昔戦った鬼の血鬼術でね』
そういうと、炭治郎くんはえ、とまた目を見開いた。
綺麗な赤い瞳が私を見つめる。
「感情を奪われたんですか?」
『そうだよ』
淡々と答える。
別に躊躇いもないし、隠すことも無いから。
驚いているのか、口をパクパクさせる炭治郎くん。
『私ね、何も感じないの。
鬼と戦って、傷を負っても、
仲間が死んでも、
美味しいものを食べても、
綺麗なものを見ても、
誰かに愛されても、
全部全部、分からないの。
何かを感じることが、出来ないの。』
そう言って、私は目を瞑った。
「っ、でも、Aさんは、いつもみんなに対して笑顔でいたじゃないですか」
『君も見てたでしょう。お館様が教えてくれるの。上手な笑い方、みんなとの話し方をね。笑うことも泣くことも、する理由が分からないから。誰かの真似をするしかないの』
「そんなのって…」
そう言って俯いた炭治郎くん。
君は、関係ないのに。どうしてそんなに気に病むの。
誰かがこんな顔をしていた時、どうするんだったっけ。
励ます、か。
私は対象がした行為への応答を全て暗記している。
日が経ったり、暫く使っていないと、直ぐにどうすればいいのか分からなくなり、ぎこちない感じになってしまうので、定期的にああしてお館様に伺っているのだ。
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時望 - 続きが気になる〜無理せずに更新頑張ってください! (2020年4月21日 23時) (レス) id: d5d3062330 (このIDを非表示/違反報告)
。*千華*。(プロフ) - 月@坂田家さん» そんな唐突に...。照れます///←ありがとうございます、更新頑張りますね〜! (2019年10月24日 22時) (レス) id: d9d802b13e (このIDを非表示/違反報告)
月@坂田家 - あっ。好き(唐突+真顔)。ぎゃああああああああああ(汚い高音)更新頑張ってください!! (2019年10月24日 20時) (レス) id: b21dfdda1d (このIDを非表示/違反報告)
めろんだよ(プロフ) - ハナさん» ありがとうございます!頑張ります〜(*´ω`*) (2019年10月22日 20時) (レス) id: 8b6dff0fdd (このIDを非表示/違反報告)
ハナ(プロフ) - とても好みのお話の予感…!!凄く楽しみです、頑張ってください!! (2019年10月22日 15時) (レス) id: 8446f3cd09 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リサ | 作成日時:2019年10月22日 10時