検索窓
今日:1 hit、昨日:10 hit、合計:17,952 hit

ページ5

お茶を口に含もうとしていた炭治郎くんは、ぶっとお茶を吹き出した。




「っ、すみません」


『気にしないで』




と、私は机の上に撒き散らされた炭治郎くんの口から出たお茶を、着ていた羽織の裾で拭いた。



それを見た炭治郎くんは、目を見開き、私の腕を掴んだ。



「そんな所で拭いたら濡れますよ!?」



『...うん、それが?』




慌てて羽織の内側から手ぬぐいを取り出す炭治郎くん。

どうしてそんなに慌てているの?羽織が濡れたら、どうしていけないの?



私がぼーっと炭治郎くんが掃除をしているところを見つめていると、炭治郎くんは拭き終わったのか、羽織を脱ぎ、腕に抱えたまま私の方を見すえた。




「あの、感情がない、とは?」




真剣な瞳と声音でそう問いかけてきた炭治郎くん。



そのまんまだよ、そのまんま。




『昔戦った鬼の血鬼術でね』




そういうと、炭治郎くんはえ、とまた目を見開いた。


綺麗な赤い瞳が私を見つめる。



「感情を奪われたんですか?」


『そうだよ』


淡々と答える。

別に躊躇いもないし、隠すことも無いから。


驚いているのか、口をパクパクさせる炭治郎くん。



『私ね、何も感じないの。







鬼と戦って、傷を負っても、





仲間が死んでも、






美味しいものを食べても、







綺麗なものを見ても、






誰かに愛されても、







全部全部、分からないの。

何かを感じることが、出来ないの。』





そう言って、私は目を瞑った。




「っ、でも、Aさんは、いつもみんなに対して笑顔でいたじゃないですか」



『君も見てたでしょう。お館様が教えてくれるの。上手な笑い方、みんなとの話し方をね。笑うことも泣くことも、する理由が分からないから。誰かの真似をするしかないの』




「そんなのって…」



そう言って俯いた炭治郎くん。

君は、関係ないのに。どうしてそんなに気に病むの。



誰かがこんな顔をしていた時、どうするんだったっけ。




励ます、か。


私は対象がした行為への応答を全て暗記している。

日が経ったり、暫く使っていないと、直ぐにどうすればいいのか分からなくなり、ぎこちない感じになってしまうので、定期的にああしてお館様に伺っているのだ。

続く お気に入り登録で更新チェックしよう!

最終更新日から一ヶ月以上経過しています
作品の状態報告にご協力下さい
更新停止している| 完結している



←四



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (68 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
143人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

時望 - 続きが気になる〜無理せずに更新頑張ってください! (2020年4月21日 23時) (レス) id: d5d3062330 (このIDを非表示/違反報告)
。*千華*。(プロフ) - 月@坂田家さん» そんな唐突に...。照れます///←ありがとうございます、更新頑張りますね〜! (2019年10月24日 22時) (レス) id: d9d802b13e (このIDを非表示/違反報告)
月@坂田家 - あっ。好き(唐突+真顔)。ぎゃああああああああああ(汚い高音)更新頑張ってください!! (2019年10月24日 20時) (レス) id: b21dfdda1d (このIDを非表示/違反報告)
めろんだよ(プロフ) - ハナさん» ありがとうございます!頑張ります〜(*´ω`*) (2019年10月22日 20時) (レス) id: 8b6dff0fdd (このIDを非表示/違反報告)
ハナ(プロフ) - とても好みのお話の予感…!!凄く楽しみです、頑張ってください!! (2019年10月22日 15時) (レス) id: 8446f3cd09 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:リサ | 作成日時:2019年10月22日 10時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。