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「私は……何も言ってないっ！
ぜんぶ、お姉ちゃんがママに言ったの。
私はまた、自分の気持ちぶつけずに逃げたんだ。
お姉ちゃんが1人で戦って、私の気持ちも代弁して…っ
私はただ、横で見てただけ…
お姉ちゃんの言葉に、心の中で同調しただけ。
都合が悪くなったら黙って、何も言わずにお姉ちゃんに託して。
ほんと……さいってい。
弱くて卑怯で、私はほんっと…っ」
橋本「いいんだよA、そんな責めなくて。
Aは言えないよ、だって恩があることも事実なわけだし。
お母さんは、それ分かってて言ってるの。
お姉ちゃんは何も知らないから、ぶつかれるんだよ。
だからいいの、Aは悪くないよ…！」
Aは随分と混乱していた。
願いが叶って安心する気持ちと、そんな気持ちを抱くことへの罪悪感。
そりゃ、自分の気持ちは自分で伝えられた方が良いに決まってる。
そんなの、私も彼女も分かってる。
分かってるからこそ、彼女は苦しんでる。
けど、彼女は今まで、その経験をして来なかった。
自分の意見を持ってはいけない、持ったら叱られる。
お母さんと同じ意見でなければ、自分が痛みを負う。
そんな中で生きてきたのだから、突然に自己主張と言われても無茶な話だ。
小さな身体は、再び引き裂かれそうなくらいに震えていた。
一つだけ言えるのは、彼女は悪くないということ。
橋本「お母さんが帰ったら、Aの平穏は守られる。
それだけでいいの、何も要らない。
ずーっと1人で戦ってきたじゃん。
いいんだよ、もうそろそろ休んでも。
お姉ちゃんも、それ分かってるからさ。
だから今回は、代わりに戦ってくれただけだから。
Aは今まで、1人で全部を痛みを背負って来たんだからいいの」
「ななみん…っ！」
橋本「長かったね、苦しかったね。
もう大丈夫、絶対大丈夫だからね」
「いいのかな…っ」
橋本「いいんだよ、心配しなくて大丈夫。
Aはなーんにも悪いことしてないんだからね。
もう自分のこと責めないでね、大丈夫だから…っ」
それでも、彼女にはその習慣がないから。
事実を素直に受け入れられるようになるのは、まだ先だろう。
自分を守ることを優先していいんだよ。
いつか、彼女にも身を持って実感して欲しいな…
私のささやかな願いは、私がここにいる間に叶うだろうか。
いや、叶えるまでは傍にいよう。
こんなに震えた背中を抱きしめてしまったら、そう思わずにはいられなかった。
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作者名：しろりんご。
| 作成日時：2023年4月9日 18時
