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小嶋side
ごめんね。
ただ、それだけを伝えたくて。
伝えなきゃいけなくて。
必死に、その姿を探していた。
トロフィーを抱えて走ること数分。
見つけた。
人が来なさそうな場所にいるということは、そういうことだ。
小嶋「…ごめんね」
「あっ…」
小嶋「嘘ついて…言えなくてごめん」
「こじはるさん…」
小嶋「卒業するって、言えなくてごめん。
にゃんにゃん仮面は私だって、ほんとのこと言えなくてごめん」
「言ったら、私が察しちゃうから…
せっかく前向きに総選挙に臨もうとしてるのに。
泣かせたくないからって、そう思ったんですよね?」
さすがは、たかみなイズムを継承したスーパーエース。
4年、いやそれ以上の付き合いは伊達じゃない。
ファンの観察眼は、侮っちゃいけない。
次に目を見開いたのは、私の方だった。
「寂しいです、すっごく。
こじはるさんまでいなくなっちゃうのは悲しい。
本当は卒業して欲しくないです。
だって大好きだもん、こじはるさんのこと…」
小嶋「…ありがと」
「でもそれじゃあダメなんですよ。
オリジナルメンバーが減って、グループの形が変わって。
それで崩れちゃ、意味ないじゃないですか。
先輩達が築いて下さったものを守って、繋げてのグループですから。
私も見てました、AKBさんの歴史。
見ちゃったからには、繋がなきゃいけないと思うんです。
5位という結果を頂いて思います。
もう私も、そっち側なんだろうなって」
小嶋「繋いでくれる?」
「もう少しだけ、頑張りたいです。
今日、より強く思いました。
また一つ、見たい景色が出来たから」
小嶋「陽菜も見たいなぁ…
客観的に、その景色を見てみたい」
「見せたいです、私を応援して下さってる人に」
随分と大人になってしまっていた。
ハラハラと泣いている横顔は、すっかり大人の女性だ。
もう、陽菜の見ていた可愛い女の子じゃない。
この子には、真剣に未来を託せる。
小嶋「優子やたかみなの気持ち、分かるな…」
「えっ…?」
小嶋「やっぱり、卒業するの待って良かった」
「こじはるさん…」
小嶋「5位、おめでとう」
陽菜のために、階段を上ってくれたんじゃないか。
そう錯覚させるほどに、出来すぎたストーリーだ。
本来なら、昨年に発表するはずだった卒業。
みんなが笑顔になれるまで、卒業はお預け。
私の勘に、狂いはなかった。
1年待った甲斐があった。
ありがとう、A。
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作者名:しろりんご。 | 作成日時:2023年4月9日 18時