無言でそっと頷いて ページ24
小嶋side
言えない。
絶対、言えない。
にゃんにゃん仮面の正体が、本当は私だってことも。
小嶋陽菜としては立候補していないことも。
そして、今年の総選挙で卒業発表をするということも。
純粋無垢な目を見たら、絶対に言えなかった。
せっかく、満面の笑みで活動できるようになったんだから。
生き生きと自分の道を進み始めたんだから。
やっと、自分で自分のことを少し認められるようになったんだから。
私にその笑顔を壊すことなんて、絶対に出来ない。
『皆さん、MV撮影お疲れ様です』
指原「えー!なに!笑」
『今、全国の劇場と中継を繋いでます。
ここで、総選挙の中間発表を行います』
渡辺「えーっ!」
「えっ…今?」
小嶋「今みたいだね、相変わらずサプライズ好きねぇ…」
「ですね…」
1人で悶々としてたらサプライズが。
今からここで、総選挙の中間発表をする。
しかも、生中継で。
驚いたけど、正直助かった…
勘の鋭いAと2人でいれば、見破られちゃいそうだから。
意識が中間発表に向いて良かった…
私はただ、Aの傍で発表を聞いていよう。
:
「全然呼ばれないんですけど…」
小嶋「すごいよ、3位以内じゃん!」
「いや、圏外かもしれないじゃないですか…」
小嶋「そーんなことないよ、大丈夫!笑」
4位までの発表が終わっても、Aの名前は呼ばれなかった。
確実に3位以内にいる。
今年のAは、勢いが違う。
それは錯覚なんかじゃない。
着実に、その名を世間に知らしめている。
何だか自分のことのように嬉しくて、誇らしかった。
___第3位 白橋A
間もなくして、名前が呼ばれた。
ついに、3位にくい込んできた。
驚いてはいるものの、自信がなさそうな姿はない。
これが、4年かけて培ってきた経験値。
いっぱい悩んで、傷ついて、やっと見つけた答え。
アイドルとして、最後まで命を燃やすと。
覚悟を決めた横顔は、こんなにも逞しくて美しい。
小嶋「Aはもう、安心して見てられるよ」
「そんな……でも、嬉しいです。
去年より順位を上げるって目標を掲げてるので」
小嶋「今のAなら絶対大丈夫」
さっきまで、私の膝の上で腕の中に収まっていたのに。
立ち上がってその場から離れていったしまったらもう、私の手は必要ないかなって思える。
今まで卒業していった同期や後輩の気持ち。
Aを見てると、すごく良く分かる気がした。
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作者名:しろりんご。 | 作成日時:2023年4月9日 18時